悩める熟年世代、VRゲームにハマる!
3ヶ月前といえば、ちょうど学校に本格的に行かなくなった時期だ。たしか西中さんがそう言ってた。
竹内
「小学生なのに凄いの作るんだね」
安井
「こんな凄いの作れたら、楽しいだろうな〜」
さっちゃん、を褒めまくる2人。さっちゃんも照れている様で……
清十郎は思きって聞いてみた
「こんなに沢山作ってて学校の方は大丈夫なの?」
さっちゃんは少し怖い顔をして
「学校行っても意味ないから」と答えて、愚痴る様に語り出した。
内容はさっちゃんのお母さん(西中)が清十郎達に教えた事とそう違いないなかった
違うのは
さっちゃんは将来家業を継ぐのが嫌だが、、でも学校行って学業頑張って、親を養わないといけないのも嫌で、絶望して引きこもりしてる。
これらは多分、親である西中さんには語ってない。
親に気を使っていて語らない。のと、その気遣いの気持ちに気づかないまま、学校に行かせようとする親の態度が腹が立つそう。
『親は自分の事を解ってないし、ちょっと考えれば子供の気持ちくらい気付けるでしよ!』それが、さっちゃんが親を拒絶する理由だった。
さっちゃんは親に慰めて欲しい訳でも、家業を捨てて欲しい訳でもない。
ましてや家業のせいでイジメられたことを何時までも気にしてる訳じゃない。
さっちゃんは同性の母親だからこそ、娘の気持ちが分からない筈がなく、母親なら娘の気持ちが分かって当たり前。その様に思っていた。
さっちゃんは母親に失望したが、失望した姿を見せたら親不孝してる様に思えて、ずっと気を使う日々を送っていた。親の勝手な都合で許可してないのに部屋に入ってきて、作り笑顔をしないといけない。24時間対応で子役をやってたら、いつしか親に顔を合わせるのが億劫になり、部屋に引きこもる様になったら、ますます干渉的になってきて、まるで、さっちゃん自身で親を不幸に貶めてる様に思えてきて罪悪感で苦しでいた。
学校に行かない理由、さっちゃんは言わなかったが多分
学校に行けば、ただ親を甘えさせる行為の様に思えて、怒りで行く気がしないのだと思う。
さっちゃんはその頃、親の存在を感じるだけで吐きそうになったらしい。足音や気配、送られたメールの文字を見るだけ、着信音を聞くだけで、どうしていいかわからずパニックしたそう。怒りで殺意まで芽生えたとかで、精神を保つ為にVRの世界でストレスを発散させていたらしい。
その発散の延長に、たまたま現金収入が発生し、もしかしたら自立できて親との縁を切る事が出来るかもしれないと期待している。
さっちゃんは一日の殆どを工場で過ごしている。
清十郎が、西中さん親子の話を聞いて思ったのは
さっちゃんと親の関係は、
【同じ家に住みながらも、心の距離は果てしなく離れている】
「ねえ、さっちゃん! 私、この商品宣伝するよ」私も匿名だし、ここなら全然恥ずかしくないし」
竹内と安井は、さっちゃんのファンになったみたいで、
さっちゃは元気よく笑顔で答えた。
「ありがとうございます! 」
さっちゃんは、もしかしたら、このままでいいかもしれない。少なくとも、今は…
「ところで、さっちゃんは引きこもり知り合いいる?」
安井が話の流れを読んで聞いた。
さっちゃんは、仕事上女の知り合いは多いが、男(ゲイを含めて)の知り合いは殆ど居ないのだそう。ゲーム時間の殆どを、ロボットと過ごしていたからである。
さっちゃん
「そういえば、初めてこのゲームをやったとき、ダンジョンから飛び降りようとして、止められたことあったの。魔法のマントがないと駄目だからと、それでテレポートで下の街に降ろして貰ったのだけど、その人ちょっと変わってて自宅警備員(引きこもりの総称)を仕事にしてるって言ってた。 あと、『プレイヤーキラーが魔法のマントを奪い暗殺してくるから魔法のマント入手は諦めた方がいい』『人口削減政策を国がしてるかもしれないから、気付くことがあったら教えて』と言われ、友達登録しました。」
清十郎は、さっちゃんから、アカウントを受け取った。アカウントにはハンドルネーム『藤井』が記載され
職業欄は『西洋騎士レイピア使い』となっている
レイピアとはフェンシングで使う様な細い剣であり、 レイピアによる剣術の基本は突きである
------------------------- 第36部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
藤井選手
【本文】
清十郎達は、さっちゃんから引きこもりプレイヤーのアカウント『藤井』を教えて貰った。早速ナビでアカウントを検索したが藤井の居場所は非公開設定にされていたのでストーカーできない。またメッセージも友達以外のプレイヤー(例えば、さっちゃん以外)からは受付けていない。
藤井は『西洋騎士レイピア使い』であり、レイピアとはフェンシングで使う様な細い剣であり、息子は高校時代にフェンシングをしていた。寺井(ゲームで出会ったメイド風女子高生のプレイヤーの話)によると、このゲームではリアルの能力がゲームにも反映される傾向にあるらしい。息子がゲームを有利に進める為に、フェンシング経験を活かした職業に『レイピア使い』を選ぶ可能性は高いと思われる。しかし居場所が分からず、メッセージも送れないのでは探せない。
藤井に友達登録されている『さっちゃん』に訪ねてみたが、メッセージは送信できるが、居場所は、さっちゃんにも非公開設定にされてた。
何らかのメッセージを送り、歩み寄るのがベターとして、どんな内容を送って良いのか分からない。清十郎は竹内と安井と一緒に考えていた。
向井
「藤井!? 西洋騎士の藤井選手!??」
向井が驚きながら、3人の話に割り込んできた。向井の話によると 西洋騎士の藤井は、このゲーム世界の超有名人であり、大会経験ある者なら誰でも知っているという。藤井は前回の世界大会の優勝者であり、賞金200億を勝ち取った伝説の日本人プレイヤーであるらしい。
その話を聞いた清十郎は、流石に藤井は自分の息子ではないなと感じた。息子が、もし賞金200億円とやらを持っているなら、もっと贅沢な暮らしをているハズだが、そんな雰囲気は一ミリも感じない。「藤井が息子であるわけがない」清十郎はそう判断し藤井を調査対象から外した。
とはいえ、息子がゲームにおいてレイピアを使っている可能性も賞金獲得目指して大会に出場する可能性も高いのであり、清十郎は大会参加(観戦するのみを含み)を目指してみようと思った。
------------------------- 第37部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
大会の準備
【本文】
清十郎は大会に出るべきか迷っていた。勝てるとは微塵も思ってないし、勝てないならワザワザやる意味もない。痛止めを使って痛みを回避できるとしても、痛いからこそスリルある戦いができるわけで、
作品名:悩める熟年世代、VRゲームにハマる! 作家名:西中