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悩める熟年世代、VRゲームにハマる!

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ゲーム内での感謝は、あくまバーチャルであって電源を切れば、なかったことになる。経験値はいくら集めてもプレイヤーとの力差が生まれてゲームバランスが壊れ、つまらなくなるだけ。
しかしこのゲームはリアルに疲れるし、リアルに痛いし、リアルに感謝される。ゲームの目標でさえ「息子を助ける」というリアルになものになってる。バーチャル性を殆んど感じないゲームであるのだ。

清十郎は察したように考えていた。それを遮るようにプレイヤーはお礼を述べていて

「実はさっきの敵は自爆するけど、自爆自体がダメージになるんじゃないんです。あれは幻覚みたいなもので、幻をプレイヤーに見せてる隙に見えないゴーストが攻撃してくるんです」


1時間後、清十郎は一旦ログアウトして現実世界に戻り思った。
『このゲームは軽い気持ちでやると、ミイラ取りがミイラになりかねない』
清十郎は息子が病みつきになり引きこもりになる気持ちが少しだけ、わかった気がした。

------------------------- 第3部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
飛び降りる父

【前書き】
この物語にでてくる内閣府の統計はフィクションではありません。最近発表された実数になります。


【本文】

3話


どうですか?ゲームの調子は?

引きこもり対策の専門家がゲームを奨めるのは おかしなものだが、しかし
専門家はこうも言っていた。

専門家『十年前、内閣府の調査で 引きこもり40歳以上の人口が50万人を超えたという発表があったのはご存知ですか? 引きこもりの平均年数は25年で、家庭内暴力は親から子へ50件、子から親へは50件の報告があります。家庭内の恥として申告のないものを潜在値に含めたら、その数は更に増えます。先日も親子間で殺人事件がありましたね。 介護疲れから殺すケースや自殺を手伝うケース、いろいろありますが、統計数値的に改善の兆しがありません。VRが発売されて以降も改善率は変わらずです。、しかし、引きこもりによる殺人事件や自殺に限っていえば、VR登場以降確実に減少しているのです。ゲームを通して重症な引きこもりを理解することで、何かしらの小さな改善の兆候が見えるのです。ですからお父様も……


重苦しい。引きこもりの子を持つというのは、実に虚しい。まるで人生を否定されたかよう。子供にも世間にも、親失格と馬鹿にされてる気がする。自己責任っていわれたくない……
清十郎はぶつぶつと呟きながゲームにログインしていた。
先日知り合った引きこもりの子持つプレイヤーとパーティーを組んで、迷宮探索をしている。回復スポットでHPを回復し、今後の戦略を話し合っていた。

「ゴーストに対する攻撃は物理こうげきよりも、たいまつが良いのでは?」

「そういばフロアのあちこちに、たいまつが設置されてましたね。ゲーム性を考慮したら、ゴースト攻略の方法として可能性あるかもしれない。序盤の敵であるのだから、そんなに強くないと思いますし」

予測通り自爆する敵(ゴースト)を追い払うことができた。隠し部屋に隠れなくてよくなり、迷宮探索かしやすくなり、行動範囲が広がっていった。

迷宮を進むと道がどんどん狭くなってく。ここでモンスターに遭遇してしまうと身動きが取れなくて厄介だ。タイマツを構える。

更に進むと、奥に明かりが見える
話し声が聞こえる。プレイヤーかもしれない。狭い道を進むと
大きなフロアが視界に現れる

プレイヤーたちが何人も集まっている。10人、20人、数を数える清十郎。皆、初心者のようで、顔をあわせて、挨拶をしている。清十郎も挨拶した。

なんで集まってるのか聞くが、皆、曖昧で「人が集まっているから、なんとなくここに」という回答。誰に聞いても同じで、最初にこのフロアに来ていたとされる者が分からない。フロアから出て行ったプレイヤーはいないので、誰かが嘘をついていることになる。

疑問していると、
フロアの床が突然開きだした。
轟音と地響きと供に、何かにしがみつか無ければ立てないだろう地震に耐えていると。
今度は前方の壁が崩れはじめる。


フロアの床下は足がすくむほどの高さがある。大地と雲、海が見える。

壁が崩れた先は視界が開けていて
惑星の輪郭さえも見える。

「まさか、ここを飛び降りろとでもいうのか?」ひとりのプレイヤーが言った。


「そうに違いない。罠の落とし穴なら、ゆっくりとは開かない筈だ」

清十郎は思った。飛び降りるのが正解だとしたら、息子もこの高さから、飛び降りた事になる。
そんな勇気が息子にあるとは思えない清十郎は、飛び降りるにしても、何かしら策があると考えた。

少なくともバラけて飛べばパーティーとは別れ別れになる可能性がある。
ここにいるプレイヤーたちも、一人でモンスターと戦うのが怖いからこそ、迷宮探索を放棄し、集まっていたのだろう。
モンスターと戦うにしろ、プレイヤー同士が共闘しあう事を求めあってるのが伺える。

皆が互いの顔色をうががいつつ、この状況を把握しようとしてるのは確かで、誰が先に発言権をとるかで付き合い方も自ずと決まるのだろうし、人見知りが激しい者は会話の群れから遠ざかって、引きこもるのだろう

皆とは距離をおいて、会話に参加してない老人キャラがいる。老人は集団をしばらくながめると
なにも語ることなく
いきなり、ひとり、ダイブしていった。
まるで水泳の飛び込み競技のようにダイブした爺さんは
凄まじいスピードで落下していき、雲の中に消えて行った。


「なんだよ。あれどう見ても初心者の動きじゃないな」
一人のプレイヤーが言い出した
それに続くように
「だったら、飛び降りるので正解だな」言い出す者が現れ
10人程のパーティーを組んで手を繋いだ。どうやら飛び降りるつもりだ。
パーティーを作り上げた社交的な青年が清十郎を誘った。
「オッサンもメンバーに入るか?」

躊躇した清十郎は、一先ず断わることにした。老人が何も語らなかったことに不安を覚えたからだ。

「歳に見合わず腰抜けなんだな、おっさん」

一人で飛べない奴に腰抜け扱いされるとは、もしこの青年が自分の息子ならば、明らかに教育に失敗したといえるかもしれない。清十郎は皮肉の気持ちを抑えて、彼らが飛び降りるのを待った。


------------------------- 第4部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
閃く父

【本文】

彼らが飛び降りるのを見届けた清十郎は
いったんログアウトした。仕事の休憩時間、あいまにプレイしているので切り替えないといけない。清十郎は仕事に忙しい人、ゲームへのまとまった時間は簡単にはとれない。


仕事を片付け。家に帰りテレビをつけ、ふと目をやると
「若者達が集団飛び降自殺をして意識不明になる」というニュース

清十郎は思った。以前から若者の自殺がやけに多いが、ゲーム内で出会った、あの失礼な若者のような奴なら、いくら死んでくれて構わないのだが……


食事中、清十郎はゲーム内での出来事を考えていた。