小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

災害地域の治安は完璧ではなく、女性は暴行を受けレイプされるリスクがある。ボランティアメンバーもその事はある程度の説明を受けていて、必ず誰かと一緒に行動する様にとの指示があった。

その女性は「一回くらいいいや。今まで大丈夫だったし、ボランティアなんだから人の手を煩わせられない」と思ったのだそう。

結果的に悲惨な末路を辿ったが
その時、僕が思ったのは仮に女性が事件を避けられたとしても、その後で別の女性が被害者になったのではなかろうかという事

被害にあう覚悟が少なからずあった被害者と、そもそも覚悟すら無かった被害者とは比較すれば、前者の方がまだマシかもしれない。と…

僕は何もない自分を満たす為の【何か】を求めている。
僕は、その【何か】がなければ欲求不満から、自身も犯罪者になりうるかもしれない事を自覚している。

何もない自分を素直に受け入れられる人は割と多い。多くの人はカネや帰るべき場所等があるからこそ、余計な事を考えなくていい。それらが無い者は【何か】を得ていないと、悪の道に引きずり込まれかねないとではないか。

この事件の犯人も、もしかしたら自身と似た存在であり、【何か】を得る手段と機会に乏しかった人なのだろうと、僕は推察していた。


僕は、しかし、思う。
このままでは良くない。いつか【何か】を得られなくなるかもしれない。そうなったとき、自殺できればいいが、大人しく自分は死ねるだろうか。
オカネを稼いで、将来の安定を得なければ、この先の自分があるとは思えない。

と、思うものの
だからこそ、自身が変わるべきなのか疑問する。

何もない自分が、人より何もない自分が、人より多くを貢献していて、でも、人より何もない。

このまま努力して社会の仕組みに屈服したとして、まるっきり無かった事にされる。人より多くを貢献した事がまるですっぽり無かった事にされる。

僕が自分から世間に対して貢献アピールをしたところでカッコ悪い。見返りを求めた時点でもうボランティアでないのだから胸を張れない。いや、そもそも、悪い事をしている訳ではないのに胸を張れないなんて、それ自体がおかしい

僕には何もない。ない事自体が胸を張れず気持ちを後ろ向きにさせる。
しかし、僕は自身に何もないままで、朽ち果てる事。死ぬこと。それそのものに焦りはなかった。

僕は、ただただ、極論して死ぬのが怖い。怖いから何かをしていないと、考えていないと、心の正常さを保てない。

この土地は多くの死体があり過ぎる。死について考え過ぎてしまう。
死を目の当たりにした人間は、
強くなるより、弱くなるのかもしれない。

災害にかこつけて罪を犯す者は、弱さを実感している証拠だろう。人はいずれ死ぬ、だからこそ死ぬ前に、死ぬ前に好きなこと(犯罪)をやる。

僕は奇しくもレイプ加害者と被害者のお陰で【何か】を得た。

この【何か】は知識の分類物だろう。だが知識として世の中の役に立つのでなければ、得た意味が無い。
知った事全てが自己満足でしかないなら、これまでの自分の何も無い人生は本当に何も無いかのよう。

僕の仮染めのボランティア精神は限界に近付いていた…
作品名: 作家名:西中