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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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双児宮

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双児宮



愛羽(ラブハ)は妊娠した。
誰の子かは判らない・・・

 天気のいいある日の午後、住宅街にある児童公園のベンチで、虚ろな表情をした女性が口を開く。側らに座る長髪の男が、その風貌とは不釣り合いなほど穏やかな表情で、その話に耳を傾ける。


********************

昔からラブハはそういう娘でした。
小学校では宿題をしたことがありません。
ハンカチやティッシュも持ち歩いたりしません。
理由を聞いても、「考えてなかった」と答えるだけでした。

クラスに仲のいい友達はあまりいませんでした。
誕生日なんかにパーティをした思い出もありません。
私はラブハが、ひとりで校庭の鳥小屋を眺めている姿を、よく目にしたものです。
でもペットが欲しいと言ったことは、一度もありません。

中学では不登校気味で、ろくに外出もしなくなりました。
でも男子生徒にはよくもてたのです。
担任の男性教諭は、よく自宅に足を運んでくれていました。
ラブハはかわいい顔をしていた。それが理由だと思います。

学力を聞かれると・・・全教科最下位だったと思います。
でも卒業する気があるのかという問いには、「ハイ」と答えるのです。
単に学校に行かなくてもよくなりたいからに他なりません。

そんなラブハが彼氏を欲しがることだけは、他の子たちと変わりませんでした。
望めばすぐに相手は見付かったようです。
中学を卒業した時には、何人の男子と付き合ったでしょうか。
中には同年代とは明らかに違う大人もいました。

16歳頃からアルバイトを始めましたが、長く続かずやめてしまいました。
なのに急に金回りがよくなり始めたのです。

SNSや出会い系サイトで、カネヅルをあさる日々を繰り返していました。
同時に家に引きこもることはなくなりましたが、逆に家に帰らない日々が続きました。

私は母親でありながら、そんな彼女のことをあまり心配していませんでした。
シングルの私も、似たような青春時代を経験していましたから。

17歳になって家に帰って来た時、気付いたのです。
「ラブ、妊娠してるの!?」
「そうみたい」
「相手は誰なの?」
「・・・・・・」

答えたくなかったのではなく、誰なのか判らないようでした。
「どうする気だったの!?」
「うーん。考えてなかった」

作品名:双児宮 作家名:亨利(ヘンリー)