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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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馨の結婚(第一部)(1~18)

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そして僕は順当に中学から高校へと上がり、受験勉強をする時がやってきた。入る大学は決まっていた。うちは代々入る大学が決まっていて、そこにトップの成績で入学できるかどうかが、僕にとっての問題だった。



勉強はどこでもできるというのが、小さな時から自宅学習をしていた僕の持論で、大学はどこでもよかった。ただ首席でなければ父さんは僕を厳しく叱るだろうことはわかっていたし、僕も自分を最高にまで高めたかったので、苦手な数学を中心に、寝る間も惜しんで必死に勉強をした。


そして試験当日、確かな手ごたえを感じて僕は満足して帰宅し、両親は久しぶりに家に揃っていて、僕が試験の内容を二人に話すと、二人とも安心したようで和やかに労ってくれて、一緒に食事をした。そして合否通知が届くまでは、僕は何かと両親に気遣われて過ごした。



でも、合格通知は届いたけど、そこにはトップだったとは書かれておらず、大学側から、「新入生代表で挨拶をしてくれ」という連絡も来なかった。数日はそれが遅れただけかと思ったけど、入学式一週間前になって父は食事の席で激怒し、「それでお前は上田家の長男のつもりか!」と怒鳴り声を上げた。母がすぐにとりなしてくれなければ、僕は食事を続けられなかったかもしれない。



僕は陰鬱な気分で入学式を迎えて、大学の体育館で列に並んでいた。「早く終わればいい」と思って悔しい気持ちを抑えていたが、「新入生代表の挨拶」と学長がマイクに吹き込んだ時、思わず顔を上げて、檀上に上がって行くのがどんな人なのか、目を見張った。


カツカツと控えめで低いヒールの音がして、その生徒が檀上に上がる後ろ姿が見えた。

それは長い髪を低い位置で結んだだけで、小柄で質素なスーツに身を包んだ、女の子だった。

その子は階段を上がったところで一礼をして、マイクの前に進み出て、こちらへ顔を向ける。その顔は、とても晴れやかだった。


まさか。自分は女の子に負けたのか。そう思ってしばらく落胆していたが、その子の挨拶を聞いていて、理由がわかった。


「…私は、12歳の頃、この大学の哲学科で教鞭をお取りになっていらっしゃいます、皆川教授の著書を読ませて頂き、この方に是非師事したいと思って、今日まで努力しました。ですから、今ここに居られることがとても嬉しいです。そして…」


ああ、そうか。そんな頃からこの大学を目指して、きっと猛勉強をしたんだ。それじゃあ勝てるはずがないな…。僕はそう思った。それから、自分の自由で進む道を歩める彼女を少し羨ましく思い、そのために長年の努力を続けてこられた彼女を、尊敬した。


その子が語った挨拶はとても丁寧で、声も耳障りが良く、よく居る普通の女の子にしか見えないのに、しっかり伸ばされた背筋と、素直に開けられた両目の輝き、誠実そうな眉が、僕の目に焼きついた。