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短編集 くらしの中で

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その二


もう一方のタイプは、親は子供への奉仕のみのケースだ。
私自身そのタイプの代表のような親子関係といえよう。私と私の母親との関係も同じで、そうすることが当たり前として子供に接して来た。

他の家族のほとんどは、子供が成人し結婚した時点で親に孝行を始めるようだ。
事実、今まで左程ではなかった友人が急にハイクラスの服装をし、持ち物も素敵なバッグや傘などの小物を持っているので、良いねと褒めると、これ娘が買ってくれたんよと自慢げに言う。

私は自分が子供より余裕のある生活をしているし、娘は必死で子育てをしているのを知っているので、帰省したときや誕生日には必要だと思われる物を送ったりまとまったお金を渡したりしている。お金の場合は自分の物を買わずすべて預金しているらしい。

娘はきっちりと家計簿を付け、自分の子供(私の孫)の学費を積み立てている。
娘からお金を無心されたことは一度もないが、母が私にしてくれたように私も同じことをしているのだ。

子供に愚痴は一切言わない。これは母が反面教師だったので、子供には嫌な思いをさせまいとの断固とした気持ちからだ。
その昔、子供がまだ小学生から中学生にかけて登校を渋るという問題児だったので、「親業」という講習を受けていた。子供に親の愚痴を訴えるのは、可愛い子に毒を吹き込むようなもので、心を病ませる以外何の利点もない。

私と同じタイプの友人もいると思うが、その人達も多分子供に愚痴ったりはしていないと思う。物を送ってはやるが、子供から送っては来ないだろう。話は聴いてやるが、親の愚痴を訴えはしないだろう。


それじゃあ寂しくないのかと言われればそうでもないのだ。
子供は親が心楽しく生活していると思えば、自分も活き活きと自分の本分をこなせるので精神的に安定ししっかりした中年時代に突入することができる。

反面、親孝行をしてもらおうと思っている者はそれが叶わないと鬱になる。子供から電話がない、それは嫁のせいだとか、男の子を持つ親でそういう人もいる。

親にとって何が一番幸せかというと、子供が自立してしっかり歩いてくれることなのだ。子供が精神的に大人になっていれば、親に孫のことを知らせてやろうという優しい気持ちが生まれる。
親にとってそのような喜びは何よりの親孝行である。



 完
作品名:短編集 くらしの中で 作家名:笹峰霧子