短編集 くらしの中で
その四
次の日も午前九時頃インターフォンが鳴る。
ウォーキングをしていると聞いていたが殊更我家の前の道を通る必要はないのだ。
やはり我家を目指して来たとしか思えない。
前日と同じく昼前と夕方の三回、食事前と食事の支度を始める四時にインターフォンが鳴った。
シャットアウトしているつもりが、まるで自分が閉じ込められている感じになっている。
コロナ禍で人とは接触しないときっぱり言っている言葉が理解できないようだ。
買い物は車のみ使って、急いで自宅の前の道路を通り抜けるとほっとした。
一日三回インターフォンが鳴るという行為はまるまる一ヵ月続いた。
完
作品名:短編集 くらしの中で 作家名:笹峰霧子