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光は空と地上に輝く(2)

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~その日から一四日後~

昨日の衝撃から一転、私はまた考え込む日々に戻った。全くLINEがこない。夢の続きはあるのか、疑っていた。すると音楽が流れた。たぶん遥だろうなと思いつつLINEを開いた。
翔?「夢の続き、知りたいよね?」
待ち望んでいたメッセージがやっと来て、私はすぐにメッセージを送る。
香歩「もちろん!教えて!」
翔?「三つ目は、私について知ること。ヒントは翔!」
香歩「私って、翔のふりしてるあなた?」
翔?「そう。なぜか、私。じゃあ頑張って!」
今度は翔がヒント。翔に関係あるのはわかった。でも、それだけで「翔」を突き止めるのは簡単じゃない。ただ、何となく検討はついている。その人にLINEを送って、会うことになった。

相手が指定してきた待ち合わせ場所に着いた私は、すぐにブランコに座った。たぶん中学の頃に翔と乗ったはずのブランコ。上には青空が広がって、太陽が照っていた。小さな頃によく翔と公園でブランコに乗って遊んだのを思い出していると相手はやって来た。
「話って何?」
「正直に答えてね。翔のふりしてるんでしょ?翔じゃないってわかってから送られてくるメッセージのくせがそっくりなんだもん。「!」つけてるところとか特に」
「さすがだね、香歩。もう私って分かっちゃったんだ。「!」でばれるとは思わなかったけど。騙す気はなかったんだよ、最初は。でももう騙したようなもんか」
 笑いながらそう答えたのは、遥。本当は遥ではないことを祈っていた。私の親友だから。私が中学生の時に私をいじめてきた奴らとは違って、私に光をくれた一人。でもどうしてか、私は騙されていたようには感じなかった。それは「翔」が親友の遥だったから。でも知りたい。どうして翔のふりをしたか。そして何より、なぜ私が話すよりも前に翔を知っていたのか。隣に座ってブランコをこぎ始めた遥に、まずはどうでもいいことから聞いた。
「ブランコもあの日のカラオケも翔が関係してるんでしょ?」
「翔とよくこのブランコに乗ったんだよ。カラオケもよく行ってて、翔のことを思い出すと行きたくなるんだ」
「どうして翔のふりしたの?」
「どうしてって、わかんないの?翔の過去調べたんでしょ?まさか調べてないの!」
「調べてないよ。遥のことを知るのが目的でしょ?ヒントだから、遥じゃなかったら過去を調べるでいいかなって思って。」
「じゃあ翔と私の過去から話さないとダメだね」
「過去って、翔と遥って知り合いなの?」
「そうだよ。翔と私は中学で同級生だったの。それも、三年間ずっと同じクラス。中学生の頃から香歩のこと知ってたんだよ。翔から相談とか自慢とかされてたから。このブランコに乗りながらね。」
「そうだったんだ。って自慢って何!?変なことじゃないよね?」
「そんな変なことは自慢されてないよ。あ、でも、一回あったかな。香歩のかわいい寝顔とか言って、寝顔見せたいくせに顔を隠して見せてきたっけ。結局顔見れなかったけど。」
 翔のバカ。心の中でそう言って、顔が熱くなった。これ以上恥ずかしい話は聞きたくなくて、私は話をそらした。
「だったら翔が病気だったって知ってたの?」
「話しそらしたねー。まぁ、知ってたよ。正直、ショックだったなぁ。一番っていうか唯一かな、仲いい男子だったからね。翔以外の男子は正直ただ話すだけの関係だったし。だから翔が病気でもうすぐ死ぬなんて聞いたら普通じゃいられなかった。その日は夜まで泣いて、次の日には笑ってた。翔が死ぬまでは笑ってようって思って。そしたら相談されたよ。『最後に彼氏と過ごすならどこに行きたい?』って。私は翔のことで頭一杯で香歩の事を考える余裕なんかなくって、ただ『翔の行きたいところ』って答えた。もちろん作り笑顔でね。本当は翔のこと好きだったし。」
 翔のことを話している遥は、嬉しそうで、いつにもまして穏やかだった。本当に翔は大事な友達、半分彼氏みたいな存在だったとオーラが語っていた。
「翔、行きたいところあるって言って、その日は一周年で、翔の病気なにも知らなくて。ひどいな、私。翔のこと大好きだったのに。」
「そんなことないよ。翔が香歩のこと話す時の顔すごかったよ。口裂けるんじゃないかってくらいにこにこして、見てて笑っちゃったもん。」
 翔の笑顔は想像するだけで癒される。それは私も同じだった。一年記念日が最後だったけれど。上から照りつける太陽が、翔との日々を思い出させる。
「その記念日に家に帰った翔からLINEがきたの。『香歩を守れないから、香歩と友達になって傍にいてやってほしい。最後のお願い。』って。断ることなんてできなかった。だってそれは翔の願いだったから。香歩に一人を卒業してもらうっていう願いね。死んでも香歩を想ってるってカッコいいよね。そして、翔は日記を残して、私は翔が大切に想う人だからっていう軽い気持ちでお願いを引き受けた。そして翔は空に翔んでいった。」
 初めて聞く話だった。翔と仲良くできてよかった。つくづくそう思った。
「香歩も一回葬式に来たんだよ?絶対覚えてないだろうけど。たぶんだけど、翔が死んでたことすら覚えてないでしょ?まぁだから翔のふり出来たんだけど」
たしかに覚えていない。翔の死は日記を見たあの日に初めて知った。
「香歩、葬式で倒れて、翔の死の前日からの記憶なくなったんだよ。そのまま知らない方がいいのかなって思ったけど、高校で死人みたいで誰とも関わろうとしない香歩に会って、こりゃ知らないとダメだなって、それで翔のふりして翔を思い出させようとしたの。まあ暗くなってた理由は全然違ったけどね。それでね、最初はただ翔を思い出してもらおうとしただけだったんだけど、流架のことがあって夢に出てきて目的が変わっちゃった。でも、思い出してくれたし結果オーライだね。翔と私のことも話せたから香歩と思い出話できるね。あ、それが翔の目的だったのかも」
「そんなことがあったんだ。なんかいろいろとありがと。私遥に出会えてよかった。」
「私もだよ」
「また夢見た時は翔のじゃなくて遥のほうでLINEしてね」
これで一件落着。あと残るは二つ。その二つをクリアすれば流架は助かる。流架と再び話す日は着実に近づいて、私はやる気に満ちていた。
作品名:光は空と地上に輝く(2) 作家名:MASA