光は空と地上に輝く(2)
始まり
~流架が来て半年~
今日は珍しく流架が寝坊した。
流架 「先行ってて!」
朝流架からLINEが来た。それで、私は久々にひとりで学校に向かった。ひとりで音楽を聴きながら坂を上った。久々すぎて新鮮に感じられた。でもやっぱり流架がいる方がいい。流架が追いかけてくるかなと思ってゆっくり歩いていた。坂を上りきって曲を替えようと携帯をいじっていたら信号が青になった。歩き始めた。また坂を上り学校に着いてしまった。結局流架は遅刻してきた。
「遅かったね」
「無遅刻狙ってたんだけどなー」
帰りも一人になった。遅刻したからか先生に呼び出されたらしい。
「いつ終わるかわかんないから帰ってて。たぶん長いと思うし。」
「そういうの厳しいからね、安藤先生」
そしてまた一人で歩き始めた。外はもう真っ暗だった。流架と付き合いはじめてから初めてだった。行きも帰りも流架がいない日は今までにはなかった。
「流架と帰りたいな」
一人で呟いてしまって慌てて辺りを見回す。周りに人がいなくて安心した。遥がいたりしたら、これからいじられまくるにきまってる。安心してゆっくり歩みを進める。坂を下って信号待ちをする。学校の方を見ても流架は来ていなかった。
「遅いな。もう来てくれてもいいのに。バーカ。」
周りに人がいないのはわかっていた。でも流架が転校してきてから、周りに常に人がいたから、少し心細かった。周りが暗いせいで余計に孤独を感じた。それに何より、帰り道がつまらなく感じる。
「まだかな。もう先生長すぎ」
信号が青にかわり、また歩みを進める。すると、イヤホンの音量よりも大きな音が聞こえた。
ふと右をみた。
私に向かって光が迫ってきた。
どんどん近づいてくる。
もう少しで私は光に圧倒される。
覚悟した。
今日はついてない。
流架………。
目の前が暗くなった。
気がついた時、私は道路に横たわっていた。
やっぱり自分は消え去るのか。まだ生きたかっ……。
目が覚めたとき、最初に視界に入ったのは信じられない人だった。目の前には翔がいた。私は抱きついていた。そして翔から離れて落ち着いてから聞いた。
「今までどうしてたの?会いたかったんだよ」
「遠くの高校に通ってるんだけど、忙しくて。ごめんね」
「元気で良かった」
翔の顔が見える。それだけで十分嬉しかった。
目を開けるとそこは病院だった。話し声が聞こえてきた。パパとママが医者と話していた。
「軽い怪我で済んで良かったですね。」
「先生、本当にありがとうございました。」
ドアが閉まる音がしたのも束の間、ママが私に気づいた。
「香歩!良かった…。車には気を付けてって言ってるのに。まぁ今回は車の運転手の責任だけれどね。ブレーキの故障だって。これからはもっと気を付けてよ。死なないでね。」
「うん。ごめんなさい。気を付ける。すごく怖かった。もうこんな目に遭いたくない。」
「それでいいよ。これから退院するから準備しといてね。軽い怪我で済んで本当に良かった。」
準備しようと立った時、信じられなかった。少し頭痛がしたけれど、他に痛みはさほどなかった。私は本当に車にひかれたんだろうか。坂を下ってくるブレーキの効かない車にひかれて、それなのに骨ひとつ折れてないなんて信じられない。事故直前の事を思い出せない。「考えても無駄か。生きてるのにかわりないし。」そんなふうに思って準備を始めた。
家に着くとすぐベッドにダイブした。着地と同時に少し痛みが走った。
「イタッ!気つけないと悪化しちゃうかも」
それからはゆっくりと動くように心がけた。
何を思ったか私は机に座っていた。そして、机の引き出しからある手紙を取り出した。それを開いて読み進めた。何回か見たことがあったからか、すぐに読み終わった。さっき会ったばかりだけれど、それでも読み終わってしまうとすぐ会いたくなる。それからまた違う手紙を読み始める。よくこうして暇を潰していた。最近は流架がいるからあまり読んではいない。
明日の学校の準備をして寝た。明日からまた流架との楽しい日常を送る、はずだった…。
学校についてすぐ、職員室に呼ばれた。
「落ち着いて聞いてくれ。実はな、林が事故に遭ったんだ。意識が戻っていないらしい。」
「事故に遭った?意識が戻っていない?なに言ってるんですか先生?そんなの嘘に決まって」
私はその瞬間、意識を失った。
目が覚めたとき私は保健室にいた。
「河合さん!大丈夫かい」
保健室の先生の声が聞こえた。隣には安藤先生もいる。
すぐに思い出す。
今朝の出来事が頭のなかを駆け巡る。
「ねぇ、ホントなの?嘘だよね?」私は泣いていた。先生に何度も聞いた。同時に流架にも聞いていた。この場にはいないのに。
そのとき、いつもは厳しい安藤先生が涙を浮かべながら言った。
「林は生きてる!死んでないんだ!泣くな!」
私の心は折れかけていた。
すぐに遥と直樹も保健室に来た。二人のおかげで落ち着いた私は、三人で休みを取って病院に行くことになった。先生が許可してくれた。
数時間後、病院に着いた。たしかに彼は生きていた。目覚めていないけれど…。それでも少し安心できた。
「香歩ちゃん!」
声と同時に抱かれていた。
あの黒髪。
流架のお母さんだ。
「香歩ちゃん大丈夫?」
そう言うお母さんも、いやお母さんの方が泣いていた。
「流架は!流架は大丈夫なんですか!死んだりしませんよね?」
最後の方は声がかすれていた。
「わからない。わからないの…。でも、大丈夫。流架なら目を覚ますから。香歩ちゃんがいるんだもの」
二人が帰っても、私は流架の傍らで泣きながら一日を過ごした。
「香歩!この桜並木きれいだね!」
「香歩!…………。」
「香歩!……………。」
「香歩!………………。」
今までの思い出が夢で何回も出てきた。私の名前を呼ぶ流架が何度も出てきた。
私は病院で寝てしまったらしく、起きた時、流架が傍にいた。意識がないのに私には微笑んでいるように見えた。いい夢をみて幸せそうに寝ているようにしか見えなかった。
「流架、目を覚まして。また楽しい時間を過ごしたいよ。流架………。」
私には耐えられなかった。流架のいない生活が始まってしまうことが、何よりも。
その日から私は学校に行かなくなった。毎日病院か家で過ごすようになった。遥と直樹は何度も会いに来てくれるが、他には誰も来ない。遥と直樹だけが折れかけた心をつなぐ支柱になっていた。
~その日から七日後~
今日も私は流架の傍にいる。いまだに意識が戻らない。一週間ほとんど寝られていない。
「寝ないと体に悪いよ。流架のそばにいてくれてありがたいけど自分の体も大切にしないと。一回しっかり寝た方がいいよ。」
流架のお母さんにそう言われた。本当は流架の傍にいたかったけれど家に帰った。横になってすぐ眠りに落ちた。途中目が覚めたが二度寝三度寝するうちに夜になっていた。お風呂に入ってすぐ、また寝た。
~その日から8日後~
ベッドの上でLINEを開いた。翔からLINEが来ていた。
翔 「香歩、流架を助けたい?」
香歩「もちろん助けたいよ…。流架が助かるなら何でもする。」
翔 「そう言うと思ってたよ。」
~流架が来て半年~
今日は珍しく流架が寝坊した。
流架 「先行ってて!」
朝流架からLINEが来た。それで、私は久々にひとりで学校に向かった。ひとりで音楽を聴きながら坂を上った。久々すぎて新鮮に感じられた。でもやっぱり流架がいる方がいい。流架が追いかけてくるかなと思ってゆっくり歩いていた。坂を上りきって曲を替えようと携帯をいじっていたら信号が青になった。歩き始めた。また坂を上り学校に着いてしまった。結局流架は遅刻してきた。
「遅かったね」
「無遅刻狙ってたんだけどなー」
帰りも一人になった。遅刻したからか先生に呼び出されたらしい。
「いつ終わるかわかんないから帰ってて。たぶん長いと思うし。」
「そういうの厳しいからね、安藤先生」
そしてまた一人で歩き始めた。外はもう真っ暗だった。流架と付き合いはじめてから初めてだった。行きも帰りも流架がいない日は今までにはなかった。
「流架と帰りたいな」
一人で呟いてしまって慌てて辺りを見回す。周りに人がいなくて安心した。遥がいたりしたら、これからいじられまくるにきまってる。安心してゆっくり歩みを進める。坂を下って信号待ちをする。学校の方を見ても流架は来ていなかった。
「遅いな。もう来てくれてもいいのに。バーカ。」
周りに人がいないのはわかっていた。でも流架が転校してきてから、周りに常に人がいたから、少し心細かった。周りが暗いせいで余計に孤独を感じた。それに何より、帰り道がつまらなく感じる。
「まだかな。もう先生長すぎ」
信号が青にかわり、また歩みを進める。すると、イヤホンの音量よりも大きな音が聞こえた。
ふと右をみた。
私に向かって光が迫ってきた。
どんどん近づいてくる。
もう少しで私は光に圧倒される。
覚悟した。
今日はついてない。
流架………。
目の前が暗くなった。
気がついた時、私は道路に横たわっていた。
やっぱり自分は消え去るのか。まだ生きたかっ……。
目が覚めたとき、最初に視界に入ったのは信じられない人だった。目の前には翔がいた。私は抱きついていた。そして翔から離れて落ち着いてから聞いた。
「今までどうしてたの?会いたかったんだよ」
「遠くの高校に通ってるんだけど、忙しくて。ごめんね」
「元気で良かった」
翔の顔が見える。それだけで十分嬉しかった。
目を開けるとそこは病院だった。話し声が聞こえてきた。パパとママが医者と話していた。
「軽い怪我で済んで良かったですね。」
「先生、本当にありがとうございました。」
ドアが閉まる音がしたのも束の間、ママが私に気づいた。
「香歩!良かった…。車には気を付けてって言ってるのに。まぁ今回は車の運転手の責任だけれどね。ブレーキの故障だって。これからはもっと気を付けてよ。死なないでね。」
「うん。ごめんなさい。気を付ける。すごく怖かった。もうこんな目に遭いたくない。」
「それでいいよ。これから退院するから準備しといてね。軽い怪我で済んで本当に良かった。」
準備しようと立った時、信じられなかった。少し頭痛がしたけれど、他に痛みはさほどなかった。私は本当に車にひかれたんだろうか。坂を下ってくるブレーキの効かない車にひかれて、それなのに骨ひとつ折れてないなんて信じられない。事故直前の事を思い出せない。「考えても無駄か。生きてるのにかわりないし。」そんなふうに思って準備を始めた。
家に着くとすぐベッドにダイブした。着地と同時に少し痛みが走った。
「イタッ!気つけないと悪化しちゃうかも」
それからはゆっくりと動くように心がけた。
何を思ったか私は机に座っていた。そして、机の引き出しからある手紙を取り出した。それを開いて読み進めた。何回か見たことがあったからか、すぐに読み終わった。さっき会ったばかりだけれど、それでも読み終わってしまうとすぐ会いたくなる。それからまた違う手紙を読み始める。よくこうして暇を潰していた。最近は流架がいるからあまり読んではいない。
明日の学校の準備をして寝た。明日からまた流架との楽しい日常を送る、はずだった…。
学校についてすぐ、職員室に呼ばれた。
「落ち着いて聞いてくれ。実はな、林が事故に遭ったんだ。意識が戻っていないらしい。」
「事故に遭った?意識が戻っていない?なに言ってるんですか先生?そんなの嘘に決まって」
私はその瞬間、意識を失った。
目が覚めたとき私は保健室にいた。
「河合さん!大丈夫かい」
保健室の先生の声が聞こえた。隣には安藤先生もいる。
すぐに思い出す。
今朝の出来事が頭のなかを駆け巡る。
「ねぇ、ホントなの?嘘だよね?」私は泣いていた。先生に何度も聞いた。同時に流架にも聞いていた。この場にはいないのに。
そのとき、いつもは厳しい安藤先生が涙を浮かべながら言った。
「林は生きてる!死んでないんだ!泣くな!」
私の心は折れかけていた。
すぐに遥と直樹も保健室に来た。二人のおかげで落ち着いた私は、三人で休みを取って病院に行くことになった。先生が許可してくれた。
数時間後、病院に着いた。たしかに彼は生きていた。目覚めていないけれど…。それでも少し安心できた。
「香歩ちゃん!」
声と同時に抱かれていた。
あの黒髪。
流架のお母さんだ。
「香歩ちゃん大丈夫?」
そう言うお母さんも、いやお母さんの方が泣いていた。
「流架は!流架は大丈夫なんですか!死んだりしませんよね?」
最後の方は声がかすれていた。
「わからない。わからないの…。でも、大丈夫。流架なら目を覚ますから。香歩ちゃんがいるんだもの」
二人が帰っても、私は流架の傍らで泣きながら一日を過ごした。
「香歩!この桜並木きれいだね!」
「香歩!…………。」
「香歩!……………。」
「香歩!………………。」
今までの思い出が夢で何回も出てきた。私の名前を呼ぶ流架が何度も出てきた。
私は病院で寝てしまったらしく、起きた時、流架が傍にいた。意識がないのに私には微笑んでいるように見えた。いい夢をみて幸せそうに寝ているようにしか見えなかった。
「流架、目を覚まして。また楽しい時間を過ごしたいよ。流架………。」
私には耐えられなかった。流架のいない生活が始まってしまうことが、何よりも。
その日から私は学校に行かなくなった。毎日病院か家で過ごすようになった。遥と直樹は何度も会いに来てくれるが、他には誰も来ない。遥と直樹だけが折れかけた心をつなぐ支柱になっていた。
~その日から七日後~
今日も私は流架の傍にいる。いまだに意識が戻らない。一週間ほとんど寝られていない。
「寝ないと体に悪いよ。流架のそばにいてくれてありがたいけど自分の体も大切にしないと。一回しっかり寝た方がいいよ。」
流架のお母さんにそう言われた。本当は流架の傍にいたかったけれど家に帰った。横になってすぐ眠りに落ちた。途中目が覚めたが二度寝三度寝するうちに夜になっていた。お風呂に入ってすぐ、また寝た。
~その日から8日後~
ベッドの上でLINEを開いた。翔からLINEが来ていた。
翔 「香歩、流架を助けたい?」
香歩「もちろん助けたいよ…。流架が助かるなら何でもする。」
翔 「そう言うと思ってたよ。」
作品名:光は空と地上に輝く(2) 作家名:MASA