左端から見れば全部右寄り Part-4
8.女系天皇と女性天皇
令和になって二年半が過ぎました。
新しい天皇陛下もすっかり板についた、なんて書くといかにも不敬ですが、やはり即位されてからしばらくは『天皇陛下』と聞けば現在の上皇陛下が浮かんだものです、でもこの頃ではすっかりそんなこともなくなりました。
今上陛下は英語も堪能でいらっしゃいますし豊かな国際経験もおありですので、今の時代に相応しい(この言葉もなにか不敬な感じがしますけれど、他にぴったりな言葉が浮かばないもので)天皇陛下だと思います。
皇后陛下もまたお見事です。
後出しじゃんけんみたいですが、ご成婚の時、皇室はとてつもない才能を得られた、と思い、ご病気などで色々言われていた時も、いわゆる役不足なんじゃないかと思ってました。
(一応念のため書いておきますと『役不足』はその役職に対して人物が相応しくない、と言う意味ではなく、その人物に対して役職の方が相応しくないと言う意味です)
皇后陛下となられた今、これほど皇后陛下に相応しい女性は日本中探しても他にいないんじゃないかと思うほどです。
ご病気などで色々と言われていた時期にも、何をおいても雅子様を庇い続けられた陛下、不敬かも知れませんが『男』でした。
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ただ、皇室は大きな問題、悩みを抱えています。
言うまでもなく後継問題です。
現在の両陛下は申し分ないのですが、両陛下の間に男子がいらっしゃらず、今後も望めないと言うのは残念なことです。
現在の皇位継承順位は、一位・秋篠宮親王 二位・悠仁親王 三位・常陸宮親王……以上、となります、三人しかおられないわけです、その中で常陸宮親王は現在84歳でいらっしゃいますから、実質、秋篠宮親王、悠仁親王のお二人だけ、と言う状況です。
そこで浮かんでくるのが『愛子様でははどうなの?』と言う考え方でしょう。
現在の皇室典範では愛子内親王に皇位継承権はありません、第一条に『皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する』と明記されているからです。
歴史上女性天皇は存在しました、ですが女系天皇はいません。
『女性』と『女系』、どう違うのか、ややこしいですね。
では『男系』と言うのはどういうことかと言いますと、わかりやすく言えば『父君を辿れば天皇陛下にたどり着く』と言うことです。
仮に皇室典範を一部改正して、愛子様が天皇陛下になられるとします、愛子様は父君が今上陛下ですので紛れもなく『男系』です、ですから『男系』の『女性天皇』となるわけです。
では、愛子様のお子様はどうでしょう?
お子様が誕生するためには配偶者が必要ですね、愛子様のお子様が『男系』であるためには愛子様は皇族とご結婚されるしかないのです、ところが現在皇族に若い男性はお一人だけ、そしてその方は悠仁様なのです、ですから愛子様が皇位を継承され、なおかつ男系を続けて行くには悠仁様とご結婚される他はない……いとこ同士の結婚に法律上の問題はありませんが、これはいくら何でも無理筋です。
昔は男系を保つために皇室に限らず大名なども側室を持ちましたが、これも現代にあっては考えられません。
ですから男系を維持して行くためには、悠仁親王が無事に成長され、結婚されて男子を設けられる以外にありません。
悠仁親王に何か不測の事態があったら、もしくは無事に成人され、成婚されても男子に恵まれなかったら……完全に手詰まりです。
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では、そもそも『男系』に限定する理由は何でしょう?
それにはかつてヨーロッパで盛んに行われ、日本でも大名間でしばしば行われた『政略結婚』を考えればわかりやすいと思います。
政略結婚は王女を王子に嫁がせる、あるいは王女を王の第二、第三王妃として嫁がせると言う形です、大名間でも同じですね。
その場合、王女を嫁がせた国は相手国と友好関係を築くことが出来、相手国、つまり王女をお嫁に貰った側の国は『男系』を維持できます。
逆はどうでしょう?
王女に王子が婿入りしたとします、そしてその二人の間に産まれた子がいずれ王を継ぐことになりますね、その父親は婿入りした王子の父たる他国の王です、そこで血統は変換してしまうわけです。
ですから男子を他国に遣るのは『人質』としてなのです、王女に婿入りさせると言うことは王女の国の側が承知しません。
話を現実に戻しましょう、仮に愛子様が皇位を継承されたとして、愛子天皇が一般男性と恋に落ちたとします。
仮にその方をAさんとしましょう。
本心では応援して差し上げたいですよね、ですが、お二人の間に産まれたお子さんは父君を辿っても天皇には辿り着きません、A家の家系です、ここで男系は途絶えることになり、A家が新しい天皇家となるわけです。
どこぞの国が、ある男性を連れて来て『この方は始〇帝の血筋を引くお方です』と結婚を迫り、その時それをどうにも断れない状況にあったとします。
すると愛子様のお子様は始〇帝の血筋を引くことになります。
それはもはや天皇家ではなく始〇帝家になってしまうわけです。
そして、お二人の間に産まれた親王が母国の女性を伴侶に選ばれたら?
天皇家の血筋は限りなく薄まって行くことになりますね。
『男系』とはそう言うことなのです。
「この男女同権の世の中で何言ってるんだ?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
女性の場合は、美智子様、雅子様の例を見れば明らかなように。民間からでも皇室に入れます、そして清子様の例を見ればわかるように、結婚して皇室から出ることも自由なのです。
ですが男子は皇室に入れません、天皇家の血筋はそうでない男子を拒んでいるのです。
皇室の男子と言うのはそうやって2700年近くにわたって男系を維持して来たのです。
では、男系を維持して行くためにはどうしたら良いのか。
それは戦後GHQによって皇籍を剥奪された旧宮家に復活していただくほかありません。
それは愛子様がその中から婿を選ばなければならないと言う意味ではありません、旧宮家の若い男性のどなたかが(できれば複数)天皇家に猶子(養子)になっていただけば良いのです。
もちろん、その方の同意は必要ですが、『必要とあれば』と仰っている若い男性は数人いらっしゃるそうです。
『血筋』だの『男系』だのと言っていると、『なにを古いこと言ってるんだよ、そんな時代かよ』と言われそうですが、天皇陛下は日本国の象徴です、天皇家が2680年にわたって守って来た男系を継承して存続して行くことは、日本と言う国が日本として存続して行くために大切なことだと考えています。
確かに今は家系だの家柄だの言わなくなりました、家柄が良くないから出世できない、なんて時代ではないですし、そんなことがあってはならないと思います。
ですが日本の象徴である天皇家の家系は守っていただきたいと思うのです。
一旦途絶えた血統はどんなことをしても取り戻すことはできないのですから。
作品名:左端から見れば全部右寄り Part-4 作家名:ST