相手の気持ちがわかるとき
二章その一
三年前に友達の友達が足が悪くなり一時入院したことがある。
その人は退院後も私が車の運転ができるいうことで頼って来るようになった。
自転車に乗って買い物ができるまでと食料を運んだり、買い物に付き合ったり、お花見に連れて行ったりした一ヵ月だった。
その人は元気になってからも足しげく私宅に出入りするようになり、私には少々迷惑でもあったが行きがかり上出入りを許していた。
次第にその人の行為はエスカレートしそれが当たり前になったころだったか、私も意思を伝えたのだと思う。
彼女は非常に疲れているとき、私が心配して電話を掛けた返事に、あなたのあの言葉がぐさっと来たのでお付き合いはもういいですとつっけんどんに電話を切り、それ以後音沙汰が無くなった。
私の言ったという言葉とは「そう言われると傷つくなあ」と言ったそうだ。
傷つける言葉とは思わず吐いた言葉を否定されて、先方も傷ついたのだろう。
「わたし、馬鹿やからこれからも何を言うかわからんから」とも言った。
私はその言葉を聞いたとき、今まであれほど面倒を看て来たのにと彼女の言い草にとても腹が立った。でも彼女の役に立ったというだけで満足だったので、彼女が元気になって独りでやれるようになっただけで良かったと思いそのことは忘れていた。
作品名:相手の気持ちがわかるとき 作家名:笹峰霧子