北へふたり旅 56話~60話
北へふたり旅(57) 行くぜ北海道①
下見の宇都宮行きから4週間。ようやく北海道旅行の朝が来た。
真夏になると野菜農家は暇になる。
ビニールハウスの茄子もキュウリも、遅い農家でも7月20日前後で
生産を終える。
8月。ハウスの中は暑すぎて仕事にならない。
この時期は、ベトナム研修生たちにも暇が出される。
秋野菜の苗が到着するまで、農家はしばしの開店休業。
ハウスへ植えられた苗が実をつけるまで、早くて30日かかる。
収穫専門のパートたちは、その間お呼びがかからない。
7月の半ばから9月の半ばまで、2ヶ月あまりの夏休みを楽しむことになる。
「とりあえず行くか」
妻をうながして家を出た。
予定よりすこし早い。家に居ても、もうするべきことがない。
準備はし尽くしてある。
荷物を積み込み、車をスタートさせた。道路は呆れるほど空いていた。
駅前のパーキングへ車を入れ、改札まであるく。
スイカを自動改札へタッチし、くだり線のホームへ出る。
電車の到着までまだ20分ちかくある。
「やっぱり早すぎたかな」
「遅れるよりはいいでしょう。はい」
作品名:北へふたり旅 56話~60話 作家名:落合順平