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ジェノサイド・ワールド

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プロローグ ベルディッシュ王国の一室にて


ベルティッシュ王国の第42代目の王を交えて、『緊急』と名した会議を開くのはこれで何度目だろうか。ベルディッシュ王国のトップ中のトップ12名、王国を支える各大臣も、暖かな日差しが舞い込む謁見の間にて、会う度に青白い顔をさらに青白くしている。国王であるエリオルトもそれの例外ではない。先ほど食べたサーモンのパイ包みが今にも胃から逆流して吐きそうな顔をしている。
 
「……最新の情報を魔術秘密情報部のレイモンドから入手致しました。件の……殺戮者【シロガネ】は、アルメリア大国から南、ミヒカンに向かっているとのこと。ミヒカンの特A魔術部隊が国境沿いに配置され、迎撃に準備している模様です。移動手段はカヤック。ベージュの外套を被り、軽3級のエナジーバリアで身を包んでいる模様です」

彼の名前はアンドール。60代ほどの、グレイヘアーで眼鏡をかけた男性がそう口にする。普段なら凛々しく恰好良いおじい様なのだろうが、今では冷や汗を垂れ流し、骸骨のように痩せ保せっているせいか、威厳が全く感じられない。声もなるべく落ち着きを払っているかのようだったが、少し震えているのが隠せていない。
 
「……カヤックか。となれば、時速60kmほど。奴が宣言して2日、動き出したのが本昨日の夜、……否、本日の午前9時頃だとしても、1週間は時間がありますな。多く見積もって10日。ミヒカンの連中に奴自身ではなく、カヤックに狙撃し足止めを依頼してはいかがか。彼らにとっても反撃のリスクはあるが、時間は稼げる」
 
カヤックとは魔物の一種で、背中に2つコブがあり、肩の付け根から翼が生えている生き物だ。移動用の生き物で、全世界各地に生息している。色に若干の違いはあれど、共通しているのは足が速く熱さに強いということ。翼はあるが、飛べないこと。

「申し遅れましたグレゴリー元帥。エナジーバリアはカヤック丸ごと覆っていて、脚のみであっても狙撃は難しいかと思われます」

グレゴリー元帥と呼ばれた大柄で、しかし程よく締まった体躯をしている男性にアンドールが答える。グレゴリーは口上から生えている髭を触りながら返事をする。
作品名:ジェノサイド・ワールド 作家名:綺斎学