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百代目閻魔は女装する美少女?【第六章】

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まっほは他のアイドルの娘とは適当にしか話をしなかった。これはアイドル同士お互いライバルなんで、友達のようにはなれないので、仕方ないんだけど。世間話くらいはするわけ。その話題のひとつで、ギャラの話になったんだ。ギャラは自分の人気と同列になるアイドル共通の興味対象だよ。そしたら、まっほのギャラの取り分が他のアイドルと比べて少ないのね。たしかにギャラは人それぞれ違うけど、それでも相場というものはある。そんな疑問を持っていたある日、マネージャーと事務所経理マンがこんな話をいるのを耳にしたんだよ。その内容とは『給料の半分を院長が取っている。万步はかわいそうだ』というもの。まっほにいつも優しい院長。まっほのお母さんでありかけがえのない友。これにはホント驚いたし、信じられなかった。でも尊敬する院長にはそんなことは言えず、悶々としながらも忘れようとしていたんだ。そんなある日。院長と知らないスーッの男が高級レストランで会ってるのを見てしまった。丁度給料もらった時。その場で院長はお金をその男に渡していたんだよね。お仕事で、そのあたりでの撮影があったので偶然見たくないものをみてしまった。あの優しくて信頼していた院長先生があんなことをするなんて。お金が必要ならまっほの生活費を切り詰めてでも渡すのに。無くなったお金のことより、院長先生への気持ちが失われたことがひどく悲しかった。まっほはこうして人間不信に陥っていたと思う、いや世間というものが何かということをやっと理解したんだと思う。こんな形で大人への一歩を踏み出したんだね。
まっほは今幽霊やってるんだけど。その事情を話しておくね。グラビアアイドルでのスイーツ大食い競争での出来事。あるアイドルの大ファンがレターの返事がないことの逆恨みで、スイーツに毒を盛ったのね。毒入りはそのアイドルに当たる予定だったんだけど、誰かが会場に間違い電話をかけてしまい、準備スタッフが席を外して、スイーツが入れ替わってしまって、結果として、まっほのところに毒入りが来て。で、今霊界にいるわけ。天獄にも地獄にも逝きたくなかった。『現世』がよかったわけじゃない。でも、このまま成仏してしまうのはすごく嫌だったのね。だからここに来てやりたいことをやるんだ。大好きなスイーツが食べられないのは残念だけど。そう、幽霊は食事ができないのね。そういう意味では都たんがうらやましい。でも食に関する思いは今も強くあるので、何でも味見してしまうんだよね。
まっほは霊界でもグラドルとして活躍したいと考えているんだよ。自分と同じような境遇で、霊界にきてしまった人をひどくかわいそうだと思う。自分も『現世』でやりたいことが十分にできず、悔しい思いをした。『現世』への心残りはあるけど、苦労続きからの解放感があって、ジバクにはならずにここに来た。でもやはりやり残したことに対する思いが強い。自分の力で貧しい孤児院を豊かにしたいとの願望がある。孤児で霊界に来た人を集めて、元気付ける機関を作りたいと思っている。ちょっと夢物語入っちゃってるけどね。これからも頑張るよ。】
万步の身の上話を聞いて、美緒。
「そうか。でもつらくはないんだな、万步。」
「うん。もう何とも思ってない。まっほは、院長が好きだもの。」
「ならよい。万步には神たちが家族なんだから。あっ、神は神であることは変わりがないがな。」
「・・・ありがとう。美緒たん。・・・う、う、う。」
美緒に抱きついた万步。両手を万步に背中に回して、包み込む美緒。これぞ神の手。霊体だから体温はないはず。でもこれ以上ないくらいのぬくもりを感じる万步であった。

「万步が元気になって良かった。見つからない親が仮にどこかで生きていたとしても、会うことはかなわない。この神もそれは同じ。どうしようもない奴だが、生きている都がうらやましい。」
美緒がひとりごちた。
「美緒、何か言った?」
由梨が心配気に美緒の顔を覗いた。
「いや、なんでもない。ははは。」
美緒の言葉には力が感じられなかった。

『ところで、ジバクたちは有名な武将たちですよね。そんな連中がこんなところにいるんですかね?』
『もっともな疑問だ。豊臣秀吉とかがこんなところにいるわけではない。』
『じゃあどうしてそんな名前を名乗っているんだ。』
『歴史に名を残したような人物はそれだけ精神エネルギーが強いんだ。それに感化されるジバクはけっこういる。生前にそういう著名人に傾倒していた場合に、強い影響を受けて、死後に自分がその人物の記憶を受け入れることがある。いやむしろ、支配されていさえする。そのひとつの例じゃないかな。』
『はあ。そんなものなんだ。』
 美緒の説明が十分に理解できないオレであった。精神エネルギーによる支配。これは霊界ではよくあることなのである。
 五人が墓場から去ったあと、李茶土はひとり残っていた。
「今回の戦闘中にもトリガーカードが1枚増えていましたね。『スペードの6=ストーンの攻撃』カード。政宗と美緒さんの戦闘中、都さんが叫んだ言葉が、言霊となっていました。激しい戦闘だったため、カード具現化に誰も気づかなかったようですね。攻撃カードは表、防御カードは裏と表現しますので、これはストーンの表ですね。順調にとカードが収集されていますので楽しみですね。女王様に報告しておかねば。フフフ。」
 薄ら笑いをこぼして、執事は消えた。