小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

百代目閻魔は女装する美少女?【第六章】

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
そんな中で沈黙していた万步がポツリ。
「こんな私の親は孤児院の院長先生。でも裏切られた・・・。私には家族はまったくいない。天涯孤独とは私のためにある言葉。」
美緒は万步の肩を抱いた。
「どういうことか。この神の前で語ることはできるか。」
万步は急に元気になった。いや元気を作ったように見えた。
「いいよ。まっほは大丈夫だから。美緒たんが聞きたいっていうなら話してあげるよ。減るもんじゃないし。」
万步の過去の記憶。それはこんなものだった。本人に語ってもらおう。
【まっほはアイドル。文字通りの偶像で、実態はそんな華やかなものではないよ。高校へはアイドルのお仕事をしながら通学しているんだ。奨学金をもらいながら頑張っている傍ら、アイドルで稼いだお金は生活費、学費を除いて、孤児院にお金を入れてるんだ。まっほは孤児院出身だから。今は自分でお金を稼いでいるので、独り暮らしをしているんだけどね。自分は貧しくないレベルでの生活。
まっほの親は孤児院の院長先生。眼鏡おばさんだよ。当然本当の親じゃない。親のことは知らない。あっ、これは正確じゃないね。知っていることもある。親がまっほにしてくれた唯一のこと。それは『まっほをコインロッカーに捨ててくれたこと』。『くれた』というのは違和感があるかもしれないね。でもまっほは感謝しているよ。どうしてかって?そのお蔭で今の私、つまり『まっほ』があるからよ。『まっほ』というのは、当然アイドルとしての在り方ね。初めは言いづらかった。私って、そんなキャラじゃないからね。でも仕事として割り切っているうちにこれが自分の一人称になっちゃった。親についてはそれだけしかわからない。それ以上のことを知ろうとも思わない。まっほの親は院長先生だからね。院長先生はまっほを警察から預かった日を誕生日にしてくれた。7月14日。フランス革命のバスティーユ牢獄襲撃の日なんだね。まっほらしいけど。ははは。
今の名前、美村万步なんだけど、苗字は院長先生の苗字をそのままもらったよ。下の名前は、院長先生が、孤児で自分の力でいくらでも人生歩めるようにとの願いを込めて万步と名付けたのね。いい名前ですごく気に入ってるよ。アイドルになってからは、『まっほ』というようになった。これは事務所の指導ね。アイドルらしさって名前から入るものなのね。でも名前の間に『っ』を入れたのは初めてではなかったんだよ。それを次に話するね。
まっほはほぼ生まれた時から孤児院にいたから、主みたいになってたんだよ。あとから入ってくる子の面倒みたり、けんかしてる子たちを止めたりとか。学級委員ってとこかな。でもそれはあとからのこと。孤児院に来る子供は大抵身寄りはないんだけど、コインロッカーで生まれた子?は珍しい。最初は『ろっは』と呼ばれてた、つまりロッカーのことね、子供だからロッカーが『ろっは』になっちゃったのね。これでずいぶんイジメられたね。ホントに小さかったからなぜイジメられるのかわからなかったけど、悔しかった。そんな時、ひとりの男子がろっはのことを助けてくれたのね。ハヤトっていう名前だったかな。その男子、ろっはがみんなにイジメられていると、『外にポケモ○人形が来たぞ』とか、『院長先生が怒ってるぞ』とか言ってみんなをろっはから引き離してくれたのね。それとか、みんなで遊ぶときに、さりげなくろっはを仲間にいれてくれたり。うれしくてお礼を言おうとすると、プイとどこかへ消えてしまう。今で言うツンデレね。そんなことが続く中で、だんだんみんなと仲良くできるようになっていったの。それでろっはは自立してきて、イジメもなくなり、リーダー的な存在になっていったのね。
院長先生はそんなまっほのことを信頼してくれて、孤児院の子供たちへのお小言なんかは、まっほに話して、まっほからみんなに伝えるというのをよくやってたね。院長先生が直接言っちゃうと歯止めがなくなったりすることあるし、みんなに優しいというイメージを植え付けるのには、いい手なのかもしれないね。いつもガミガミじゃあ嫌われるからね。まっほをフィルターにしてたわけだね。でもまっほは利用されてるというよりは、それだけ任されているという自負があったね。こんな経験がアイドルという社会に接するのに役立ったように思える。院長先生はまっほには友達のようだった。いろんなことを教えてくれたし、なんでも相談に乗ってくれた。よく母親は自分の娘を友達としてみるっていうけど、そんな感じ以上のレベルだったように思っていた。他の人のケースがよくわからないけど、まっほには親友的な存在だったね。でも他の子の前ではまったく平等な扱いで、誕生日といっても月単位で行われる合同モノだけ。そのバランス感覚も好きだったな。誕生日といえば、ケーキ。1カ月で一番楽しみな日。普通の日のおやつは、クッキー、チョコレート、キャンディー中心。たまにプチケーキくらいはあったけど。大きなケーキ、といっても普通のショートケーキだけど、それが食べられるのはこの合同誕生日だけ。だからすごく楽しみだった。そんなケーキへの執着?がその後のスイーツ好きに大きく影響してるように思えるのね。ただし、ひとつネックがあったけど。それはそのうち話すね。
アイドルの話に戻るね。アイドルと言ってもバラエティが中心。本当の売れっ子にならないと下積みが大変なのね。最初は大食いアイドルとしてデビュー。とにかくたくさん食べるんだよ。普通で5人前。頑張れば10人前までいく。食べるものは当然余るので、それをもらっては孤児院へ送ったりしているんだよ。でも高級料理は拒否、B級グルメとして活躍したんだよ。でも後から院長先生に聞いてびっくりしたんだけど、食べ物をもらった孤児院は孤児院でトラブルが起こってるのね。というのも、孤児院の中では力関係で強い者がいいものを取るというのがあったのね。人間の性というものなのかな。社会的に弱い者同士なのに、あっ、それは私の偏見かもしれないけど、そういう子供たちでも争ってしまうのね。弱い者同士、支え合って生きていかなきゃいけないと思うんだけど、人間の世界って難しいのね。それぞれのムラの中でのヒエラルキーってのが存在するのね。ひどく悲しい思いにかられたよ。
そうこうしているうちに努力の甲斐あって、少しずつ売れてきて、グラドルのお仕事が来るようになったんだ。私は太る体質で、自分としては人様に晒すようなボディではとてもないと思うんだけど、胸の大きさが受けたらしく、グラビアのお仕事が増えてきたの。それである程度稼げるようになってきたんだ。すこしずつだけど貯金もできるようになってきて、アイドルとしてのお仕事が面白くなってきたんだよね。