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寵愛〜隻眼の王の華嫁は二度、恋をする〜

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「寒いか?」
 甘い声音で問われ、セリョンは甘えるようにコツンと頭をムミョンの肩に預ける。セリョンはムミョンの温もりに寄り添うように、素直に彼に抱き寄せられるまま腕の中に収まった。
 そう、今だけは、王と町娘ではなく、ただの男と女でいたい。せめて今だけは、ただのムミョンとセリョンでいられるこの大切な時間に浸りたい。
 セリョンは愛しい男の腕に包まれながら、ひと刹那の幸せを咬みしめていた。
                (了)
 
 
 


水仙(黄色)
  花言葉―私のもとへ帰って、愛に応えて
 
ムーンストーン
  石言葉―愛の予感、純粋な愛。和名は月長石。六月の誕生石。
 

 

 あとがき

 寒さが厳しい真冬のただ中ですが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 私事ですが、今年は長男が大学受験で、自分が受けた通信制大学の単位認定試験よりも息子の方が心配です。親が見ても可哀想なほど頑張っているので、何とか希望する大学に進学できたらと願ってはいるのですが、こればかりは思うように任せないのが世の中です。
 どんな結果になるにせよ、進むと決まった道が息子にとってはベストな形なのだと考えています。
 さて、最近、私はあることを痛感しております。急なぎっくり腰で、執筆も思うに任せない状態になったのは二年前の春のことでした。あの時、小説作品を書くことについても、色々と我欲というものが伴うものだけれど、そんなことは一切どうでも良い、ただ小説を書けさえすれば幸せだ! と強く想いました。
 良い作品を書くこと、たくさんの方に読んで頂くといった副次的な願望などは取るに足りないことで、まずはベストコンディションでなければ小説は書けない、当たり前ですが、そんな想いを噛みしめたのです。
 そしてまた今、同じようなことを考えていることが多い日々です。心身共に健康であってこそ、夢に向かって邁進できるのですね。だとすれば、健康って本当にどれだけありがたいことでしょう。
 そんな中で書いた小説は、通信制大学の単位認定試験のためにおよそ一ヶ月のお休み期間を経て、久しぶりの作品です。今回はまた記念すべきシリーズものの第一話となりました。色々と悩みもある中での執筆というのは理由にはならないのは承知ですが、そのため、お目障りな部分も多々あるかと思います。
 コチラの作品、プロットやストーリーなど色々とアイデアがあるので、しばらく集中して描いてゆきたいと思います。妓房の娘と王さま(第一話では世子)の恋。いつものように王さまは外せないヒーローですが、今回は王さまが登場する割に、舞台は王宮よりは市井の方が多くなりそうです。
 常々思うのは、やはり時代物は雲の上の方々だけでなく市井で生きる庶民を描いてこそだということです。なので、このシリーズでは、そういう点にもウエイトを置いていきたいなぁと考えています。
 というわけで、まだまだ寒いですが、春が待ち遠しいこの季節、どうぞ皆様もインフルエンザなどに気をつけて下さいませ。
 来月は作品の舞台も季節は春爛漫、桜満開といきたいです―笑
 それでは、今回もありがとうございました。
                         東  めぐみ拝
二〇一九年二月吉日
 




 

 
  



   
  

  あとがき

 思えば、この「王宮の陰謀」シリーズの第一話を書いたのが去年の二月、第一部、第二部と書き継いで、一年半後の今年八月に第三部が完成し、長編が完結しました。
 ここまで続くとは作者自身も考えておらず、第一話では十六歳だったヒロインのセリョン、二十歳のムミョンが夫婦となり、それぞれ四十二歳と三十八歳になって終わりました。
 自分でも愛着のあるこの物語が完結した記念に、第一話を書籍化することにしました。
 また、来月から新たな作品に取り組んでゆくつもりです。今度は、どんなヒロインに会えるのでしょうか。今、新しいシリーズを書き始める前の長距離走のスタート前のような、ワクワクドキドキ感と不安のない交ぜになった気持ちです。
               

                  東 めぐみ拝
二〇二〇年八月吉日