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北へふたり旅 51話~55話

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 「2階建て車両だぜ。そのうえグリーン車のマーク?。
 いったいぜんたいどうなってんだ。上野東京ラインは?」

 2階建て車両が停車位置へすすんでいく。
その時なぜか2階の乗客から、見下されているような気がした。
あわてて1階席へ目を転じた。
驚いた。1階席の窓はわたしの足もとにある。

 グリーン車の1階席は、車両内の階段から下へ降りていく。
とうぜん座席はホームより下の位置になる。
座席に座れば、線路に降りて、ホームを見上げるような態勢になる。

 線路に降りたことなど、誰も一度もないはずだ。
自分の目線より上に、駅員や他の乗客、自販機があるという
非日常的な景色がひろがる。
新鮮なことこの上ない。この感動は2階席ではぜったいに味わえない。
しかし。デメリットもある。

 気配に気がついたのか、乗客のひとりがわたしを見上げた。
乗客の目の位置はホームと同じ高さ。
斜め下からわたしの全身を見上げる形になる。

 (あっ・・・下から覗かれる!)

 あわててホームを見回した。
スカートの女子高生がこの場にいたら大変なことになる。

 心配は無用だった。
この時間、2階建て車両がやって来るのを知っているのだろう。
女子高生たちは遠巻きに、安全な場所に避難している。
なにも知らずホームの先端に立っているのは、わたしだけだ。

 「驚いた。1階席の目線がホームと同じ高さだ。
 不可抗力で女性のスカートを、下から覗く形になってしまう・・・」

 「うふっ。それは杞憂です。
 黄色い線の内側にいるかぎり、スカートの中は見えないでしょう。
 心配し過ぎですあなた。
 そんなことより早く乗り込みましょう。
 のんびりしていると、上野東京ラインが発車してしまいます」

   
(56)へつづく