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コーンのヒーロー
コーンのヒーロー
novelistID. 446
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私にできる事

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 世界はやるせない出来事で溢れている。
 ほら、ごらん。今日もこの世界で皆が泣いている。



道の端で三毛猫がにゃあにゃあ鳴いている。

「ああ、可哀想に、あなたはノラなのね」

私には猫を養う余裕も甲斐性もなかったので、一瞥して歩みを緩めずに通り過ぎた。



ゴミ置き場をつついてカラスがかあかあ鳴いている。その上の電線では、他のカラスが目を光らせている。

「ああ、可哀想に、あなた達は進んで人間社会に組み込まれているのね」

私にはゴミ置き場をつつかないで、カラスが生きていく方法など、とんと見当が付かないので、カラスが散らかすゴミを避けながら通り過ぎた。



道の真ん中で女の子が、顔に泥を付け、膝を抱えてわあわあ泣いている。

「ああ、可哀想に、あなたは転んで膝を擦りむいてしまったのね」

私には怪我を治療する道具も知識もなかったので、気遣わしげな視線を送ってから、女の子を迂回して通り過ぎた。



「ああ、世界はなんてやるせないんだ」

 いや、でも、それは私の前だけだったりして。

もしかしたら、あの後優しい人が可哀想な三毛猫を拾っていったかもしれない。
もしかしたら、あの後ゴミ置き場にはネットが掛けられて、カラスは野生の世界で逞しく生きていったかもしれない。
もしかしたら、あの後女の子の母親が現れて優しく怪我の手当てをしたかもしれない。


でも。


もしかしたら、あのまま三毛猫は道の端で丸まっているのかもしれない。
もしかしたら、あのままカラスはゴミ置き場をつつき回しているのかもしれない。
もしかしたら、あのまま女の子は膝から血を流して座り込んでいるのかもしれない。


どうなったのかは分からない。
私はその采配は他人の手に委ねてしまったのだ。
良い展開を願う。だが、そんなものは無いと自分の常識が否定する。

「ああ、あの子達は一体どうなってしまうのだろうか」

私は悲しかった。
 悪い展開ばかり想像してしまう。
 皆きっと私と同じような事をするのだろう。そしてやるせない現実に溜め息を吐くのだろう。


 皆々、おんなじなんだ。きっと。何時でも、何処でも、どんな場合も。


 それを解消する為には、誰かが動けば良いと思った。
作品名:私にできる事 作家名:コーンのヒーロー