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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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涼子の探し物(1)

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新しい住人もすぐにこの部屋に入って来て住んでいる。僕はそれが恨めしかった。ここは僕と母さんの家なのに。



寝室のドアのところで顔を見た女の人を、今すぐにでも追い出してやりたいと思ったけど、僕がこんなに泣いてるのに、さっきも怒鳴りつけたのに、それに気付かないんじゃ無理だと思った。




それに、そんなことをして母さんがまたこの部屋に住むわけでもないし、もう一度母さんと話が出来るわけでもない。だって僕は幽霊だ。生きてる人には見えない。…多分。





洗面所の水音はとっくに止んで、さっき寝室のドアが閉まる音がしていたから、女の人は寝室に帰ったんだろう。


僕が泣き止んで顔を上げると、冷蔵庫に貼ってあるチラシが目についた。カレンダーのようだった。いや、違う、ゴミ回収の予定表だ!

僕は慌てて駆け寄って、冷蔵庫に貼り付いた。そして、一番上に大きな緑色の文字で書かれた数字を読み、愕然とした。




「2020年…?」




嘘だ。だって今年は2012年のはずだ。そんな。嘘だ。


でも、キッチンも、仕切りがない隣のリビングダイニングも新しい住人の物で埋め尽くされて、生活の続いている事が、その雑然さから読み取れる。

飲みかけのペットボトルのカフェオレがあるテーブルも、シンクに放ったままの食器も、ゴミ回収の予定表に書かれた年月日も、嘘やジョークではなくただの日常なんだ。

そしてそれらの何にも触れず、住人に声すら聴いてもらえない僕の方が、この空間で異質なのはもう分かっていた。それでも僕は落ち込んだ。





僕は、八年後に急に呼び戻されたらしい。一体どうして。もっと早くに来たかった。母さんがまだここに居るうちに。



自分が最期に言おうとした言葉を思い出す。



「母さんのごはんを家で食べたい」。



もしかして僕は、その言葉通りにここに現れ、なぜかそれが八年も掛かったのだろうか。もう母さんの居ない家に。

そりゃそうだ。八年も母さんがここに居られるはずがない。僕と過ごしていた家で。

そんなに長い間、死んだ僕の思い出と居続けるなんて、あの優しい母さんが堪えられるはずないじゃないか。




僕はもう一度蹲り、また泣いた。母さんはどこに居るんだろう。それだけ考えて。





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作品名:涼子の探し物(1) 作家名:桐生甘太郎