北へふたり旅 41話~45話
北へふたり旅(41) 第四話 農薬⑦
茎や葉の表面から吸収されることで、全体を枯らしていくタイプの除草剤。
グリホサートを主成分とするラウンドアップは、その代表格。
「ラウンドアップの安全性を、同社はこんな風に説明している。
成分のグリホサートが、植物がアミノ酸を作り出す経路をブロックする。
シキミ酸経路というものだ。
アミノ酸を作れなくなった植物は枯れる。
しかし人間にこのシキミ酸経路は存在しない。
だから人体は安全だと」
「発がん性の疑いに反論しているのですね」
「確かに人体にシキミ酸経路は存在しない。
しかし、腸内細菌がそれを持っている。
植物を殺すグリホサートは、シキミ酸経路を持つ腸内細菌を破壊する。
腸内細菌を損なうと、アレルギーや、自己免疫疾患が発生しやすくなる。
だからグリホサートは人体に有害だと言わざるをえない。
グリホサートの使用量が増えるたび、こうした疾患で苦しむ人の数も
また増えることになる」
自然界へ与える影響も、はかりしれないものがある。
グリホサートの空中散布は、大量、かつ広範囲におこなわれる。
現代版の無差別爆撃だ。
こうした結果、被害は自然界の全体におよぶ。
人はグリホサートから避けることはできる。
しかし自然界に生きているさまざまな生命体は、まったくの無防備。
人よりさらに危険な状態に置かれている。
作品名:北へふたり旅 41話~45話 作家名:落合順平