世界一キレイなもの
僕と彼女は夕日の前に腰掛けた。
「キレイだね」
「ええ、キレイ」
すると、夕日は怒ったように文句を言ってきた。
「君達は大分無責任な事を言うものだね」
彼女は首を傾げた。
「無責任?何故?」
夕日は溜め息を吐いた。
「僕がキレイに輝くのは、僕が必死に頑張っているからさ、君達に人事のような感想を言われる覚えなんてないね」
彼女は悲しそうな顔をした。
「私はキレイなものをキレイと言ってもいけないのね」
僕は彼女が悲しそうな顔をしているのが嫌だったので、顔を半分だけ出している夕日に向かって言い返した。
「夕日はキレイさ」
「まだそんな事を言うかね」
「君の言う通りさ、夕日がキレイなのは君が頑張っているからだ」
夕日が威張ったような顔をする。
「そうだろう、そうだろう、その通りだろう」
「でも」
僕は言葉を続けた。
「夕日がキレイだと言えるのは、僕達が頑張っているからでもある」
夕日がまた不機嫌そうな顔になった。
「それは、君、なんて傲慢な考えだろう、人の努力を盗るものじゃないよ」
今度は僕が不機嫌そうな顔になった。
「傲慢なのは君の方さ、美しさとは人に言ってもらわなければ、そうは成れないものだよ」
夕日は益々顔をしかめる。
「そんなもの要らないさ、僕がキレイなのは僕が分かっていれば良いのさ」
僕も益々顔をしかめる。
「そんなの、淋しいじゃないか」
夕日は僕を嘲笑った。
「これだから人間という生き物は、他人にそんなものを求めるなんて、ちっぽけなものだね」
夕日は頭の端だけ出して言った。
「君達は他の誰かが居ないと生きられない、弱い生き物だ」
僕は彼女の手を引っ張って立ち上がった。
「どうやら君と分かり合うのは無理そうだね、でも僕は、それでも君をキレイだと言い続けるよ」
僕達は、完全に沈んでしまった夕日に背を向け、歩き出した。
「夕日とケンカをしてしまったわ」
星に照らされる道を歩きながら、彼女は言った。
僕は彼女に尋ねた。
「さっきの話の続きをして良いかい?」
彼女は微かに微笑んで頷く。
僕は握っている手に少し力を込めて言った。
「夕日はね、夕日がキレイなだけじゃ、僕達はキレイだとは言えないんだよ」
「どういう事?」
「キレイだね」
「ええ、キレイ」
すると、夕日は怒ったように文句を言ってきた。
「君達は大分無責任な事を言うものだね」
彼女は首を傾げた。
「無責任?何故?」
夕日は溜め息を吐いた。
「僕がキレイに輝くのは、僕が必死に頑張っているからさ、君達に人事のような感想を言われる覚えなんてないね」
彼女は悲しそうな顔をした。
「私はキレイなものをキレイと言ってもいけないのね」
僕は彼女が悲しそうな顔をしているのが嫌だったので、顔を半分だけ出している夕日に向かって言い返した。
「夕日はキレイさ」
「まだそんな事を言うかね」
「君の言う通りさ、夕日がキレイなのは君が頑張っているからだ」
夕日が威張ったような顔をする。
「そうだろう、そうだろう、その通りだろう」
「でも」
僕は言葉を続けた。
「夕日がキレイだと言えるのは、僕達が頑張っているからでもある」
夕日がまた不機嫌そうな顔になった。
「それは、君、なんて傲慢な考えだろう、人の努力を盗るものじゃないよ」
今度は僕が不機嫌そうな顔になった。
「傲慢なのは君の方さ、美しさとは人に言ってもらわなければ、そうは成れないものだよ」
夕日は益々顔をしかめる。
「そんなもの要らないさ、僕がキレイなのは僕が分かっていれば良いのさ」
僕も益々顔をしかめる。
「そんなの、淋しいじゃないか」
夕日は僕を嘲笑った。
「これだから人間という生き物は、他人にそんなものを求めるなんて、ちっぽけなものだね」
夕日は頭の端だけ出して言った。
「君達は他の誰かが居ないと生きられない、弱い生き物だ」
僕は彼女の手を引っ張って立ち上がった。
「どうやら君と分かり合うのは無理そうだね、でも僕は、それでも君をキレイだと言い続けるよ」
僕達は、完全に沈んでしまった夕日に背を向け、歩き出した。
「夕日とケンカをしてしまったわ」
星に照らされる道を歩きながら、彼女は言った。
僕は彼女に尋ねた。
「さっきの話の続きをして良いかい?」
彼女は微かに微笑んで頷く。
僕は握っている手に少し力を込めて言った。
「夕日はね、夕日がキレイなだけじゃ、僕達はキレイだとは言えないんだよ」
「どういう事?」