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コーンのヒーロー
コーンのヒーロー
novelistID. 446
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世界一キレイなもの

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 僕と彼女は夕日の前に腰掛けた。

「キレイだね」

「ええ、キレイ」

 すると、夕日は怒ったように文句を言ってきた。

「君達は大分無責任な事を言うものだね」

 彼女は首を傾げた。

「無責任?何故?」

 夕日は溜め息を吐いた。

「僕がキレイに輝くのは、僕が必死に頑張っているからさ、君達に人事のような感想を言われる覚えなんてないね」

 彼女は悲しそうな顔をした。

「私はキレイなものをキレイと言ってもいけないのね」

 僕は彼女が悲しそうな顔をしているのが嫌だったので、顔を半分だけ出している夕日に向かって言い返した。

「夕日はキレイさ」

「まだそんな事を言うかね」

「君の言う通りさ、夕日がキレイなのは君が頑張っているからだ」

 夕日が威張ったような顔をする。

「そうだろう、そうだろう、その通りだろう」

「でも」

 僕は言葉を続けた。

「夕日がキレイだと言えるのは、僕達が頑張っているからでもある」

 夕日がまた不機嫌そうな顔になった。

「それは、君、なんて傲慢な考えだろう、人の努力を盗るものじゃないよ」

 今度は僕が不機嫌そうな顔になった。

「傲慢なのは君の方さ、美しさとは人に言ってもらわなければ、そうは成れないものだよ」

 夕日は益々顔をしかめる。

「そんなもの要らないさ、僕がキレイなのは僕が分かっていれば良いのさ」

 僕も益々顔をしかめる。

「そんなの、淋しいじゃないか」

 夕日は僕を嘲笑った。

「これだから人間という生き物は、他人にそんなものを求めるなんて、ちっぽけなものだね」

 夕日は頭の端だけ出して言った。

「君達は他の誰かが居ないと生きられない、弱い生き物だ」

 僕は彼女の手を引っ張って立ち上がった。

「どうやら君と分かり合うのは無理そうだね、でも僕は、それでも君をキレイだと言い続けるよ」

 僕達は、完全に沈んでしまった夕日に背を向け、歩き出した。



「夕日とケンカをしてしまったわ」

 星に照らされる道を歩きながら、彼女は言った。
 僕は彼女に尋ねた。

「さっきの話の続きをして良いかい?」

 彼女は微かに微笑んで頷く。
 僕は握っている手に少し力を込めて言った。

「夕日はね、夕日がキレイなだけじゃ、僕達はキレイだとは言えないんだよ」

「どういう事?」