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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 後編

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しるし



「あら、見て」

擦れ違った通行人の声に、郁は足を止めた。みなが一様に、霧雨の中で足を止め、同じ方向を向いている。

「お山にほら、白い虹!」
「キレー!てか珍しくない?」

沓薙山の山頂に、色のない虹が掛かっている。郁はそれを初めて見た。白い虹…。なんて幻想的なのだろう。霧雨を透過して落ちて来る、厚い雲の隙間を抜けた柔らかな日の光。虹が出る条件があったような気がする。太陽を背にして、雨を見る、だったかな。郁はそんなことを思いながら、しばらく虹から目が離せなくなった。

「あれって神様の虹なんだよ」

母親と手を繋いだ少女が、嬉しそうに言うのが聞こえた。

「いまきっと、神様がお山にいるんだよ」

無邪気な子どもの言葉に、母親も周囲の者も温かな笑みを浮かべている。あそこはそう、四人の神様がいる山だ。神々しい光の雨の下で、郁は瑞のことを思い出している。

(あそこに、須丸くんがいる気がする…)

今朝京都を発ち、町へ戻って来たばかりだ。駅で別れた彼は、少し焦っている様子だったけれど、どうしているのだろう。

星屑の夜の中で交わした会話が蘇る。二人だけで交わした約束のことを。
約束を果たす日が来たら、郁はもう迷わず自分の思いを伝えようと決めていた。



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