響くがままに、未来 探偵奇談22 前編
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藪の中に、夜の帳が下りている。ぽつんと佇む小さく粗末な庵の中で、四つの影が揺らめく。囲炉裏の火を囲み、彼らは言葉を交わしていた。
作務衣の少女と、少年と、小柄な老人と、そして巨大な男だった。
「こうなることはわかっていたはず」
少年が呟く。
「見過ごした我らにも責はある。やはりあれは、許してはならぬ運命の持ち主であったのでは?」
それはどこか咎めるような口調だった。それを制するように、老人がやんわりを口を挟んだ。
「しかしあれは言うておったのう。人間の想いは、いろいろなことを動かすと。理屈や理で動かせるものではないと」
どこか楽しそうな口調だった。ほほほ、と笑いながら、老人は茶をすすった。
「わしらの役目は、人々を正しい場所へ導くこと。しかしその正しさは千差万別、人によって様々じゃ」
「我がままで他者の運命を振り回すことも正しさだと?」
少年は老人の言葉を快く思っていないようで、尖った口調で返している。
「…われには、わかる。瑞の気持ちがわかる」
作務衣の少女が呟く。少女は他の三人よりも、深く人と関わってきた。好きだ、嫌いだ、一緒にいたい、離れたくない、悔しい、悲しい、憎い…そんな感情に、一番近い存在だった。
「人の思いは強い。我らがこうして、たった一人の魂に振り回されているのがその証左。童子よ、そなたも気づいておるのではないのか。我らはもっと、彼らに寄り添ってもいいのではないかと」
作品名:響くがままに、未来 探偵奇談22 前編 作家名:ひなた眞白