北へふたり旅 36話~40話
北へふたり旅(39) 第四話 農薬⑤
「モンサント社は種子ビジネス界のモンスターだ。
もともと人工甘味料のメーカーとして誕生した。
その後、除草剤の分野に進出。
ベトナム戦争で使用された枯れ葉剤の原料も、同社の製品だった。
こうしたノウハウをもとに、あたらしい除草剤を開発した。
同社が売り出したこの除草剤は、全世界的な大ヒットになった。
その後、同社は種子の分野へも進出した。
いまでは遺伝子組み換え種子のほとんどを、独占している」
「詳しいですねぇ」
「あたりまえだ。農業と除草剤は切っても切れない関係だ。
必死に勉強するさ。俺だって」
近年、健康に対する関心が高まっている。
無農薬や有機栽培が注目されているが、農作物を大量に栽培する場合、
こうした製法にはコスト的な無理がある。
無農薬をうたっていても実際には、農薬に分類されない化学物質を
除草剤代わりに使っている。
農産物はちょくせつ人の口へ入る。
できれば化学物質と無縁であることが望ましい。
しかし。きれいごとばかり言っていたのでは農業が成り立たない。
「必要に応じて使わざるをえないのさ。だからよ。
いやでも除草剤の大手メーカー、モンサント社を研究するだろ。
危険なのか、それとも安全なのか。
真実を知りたいのさ。百姓なら」
「で。どうでした?。Sさんが調べた結果は?」
「クロだ。それも真っ黒だな」
「真っ黒!。クロですか・・・モンサント社は」
「ラウンドアップという名前、知ってるな」
作品名:北へふたり旅 36話~40話 作家名:落合順平