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小説家を目指し、上京してきたのは十年前。悪戦苦闘しながら書いた小説は結局何の賞も取れず、ただ都会の波に逆らい続けるには、その波に逆らうだけの度胸や強さは持ちえず、最悪波に逆らう魚群となればよいものの、余計なプライドと小説家は一匹狼だという謎の固定概念に囚われた一匹の小さな魚でしかない私は、そのまま都会と言う波に淘汰された。いつからか私の綴る文章は世界をも震撼させるものから、売れようとするために民衆にも理解されやすいであろう量産型且つ安物の芸術へとなり下がってしまった。足りない脳みそでできる限りの知恵を振り絞ったほうがよかったのかもしれないが、言い訳を聞いてくれ。私のようなものが書く小説とは、結局のところ良くて一流の補欠程度のものしかないのであれば、数打ちゃ当たる戦法も悪くないものだとそう予想していた。なぜなら「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ということわざが存在しているのだから、二流小説家のカバン持ちをする私程度の小説家はそうするしかないと、半分期待半分絶望していた。しかし結果は言わずもがな撃ってきた玉という玉は、さよならホームランよろしく、全く予期せぬ方向へと飛んで行った。
小説の効率どうこう起承転結云々脳内で緊急会議をしている間、私はせめて脳内にいる上司たちに有益な情報を提供しようと、勉強と自分の想像力向上を称して傑作と駄作の境界線を漂っているB級映画並びに小説を網羅しつつ、タバコと酒を片手に、クオリティは並の半減でしかないものを一心不乱に書きなぐる日々を過ごしていた。もちろんそんな安物の芸術など売れるはずもなく、バイトとバイトと、バイトとを繰り返す日々になっていた。時には全く執筆せず、時には何晩も机の前にしがみ続けたまの執筆活動は、どうせだめだと、いやきっと次こそは、の大乱闘。憎むは次から次に浮かぶアイディアだが、それは天才がアイディアらをろ過した過程で出たゴミでしかなく、悪くはないがなどとよく腕を組まれていた。きっと天才も同情してこれならいいよと差し入れいてくれたに違いない。もし天才たちが私に変な同情を与えずにいたら、きっと私はすぐに区切りをつけて真っ当な社会人になっていたのは明白である。
作品名: 作家名:茂野柿