小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

端数報告

INDEX|78ページ/78ページ|

前のページ
 

・毒をソ連か中国に売って亡命しようとでも企んでいて、事件はそのための実証試験だった。
 
か、もしくは、
 
・麻薬中毒の変質者であったりして、クスリを買うカネが欲しさの犯行だった。
 
といった推理をしていたのではないか。それを内偵で確かめようとしていたところに、遠藤美佐雄が嗅ぎ付け寄ってきたもんだから、追っ払うため《権威筋の命令》という口実を使い、マンロウに口裏を合わせてくれるように頼んでマンロウが応じた。
 
マンロウとしては、藤田の推理が当たってくれていたならばマッカーサーの実験だったなどという噂が消えて助かるからだ、と。で、さてここで竹内(遠藤美佐雄)が邪宗を奉ずる探偵・清水小五郎から買う情報だが、これは、遠藤誠の本からこないだ見せた、
 
画像:帝銀事件と平沢貞通氏360-361ページ
 
これと同じものだとわかる。訳はかなり違うけれども。
 
遠藤誠の本では《マンロウ》の名がこっちでは《マンロー》。《フェイトン》が《イートン》。《フジタ・ジロウ》が《藤田二郎》。いやそんなのはどうでもいいが、青で囲った部分に注意してもらいたい。
 
《記者たち自身が探偵となって》
 
と遠藤誠の本で訳されていたものが、『占領都市』では、
 
《刑事を装うといった》
 
習慣うんぬんという訳になっている。
 
のがわかるね。たぶんこいつは、《刑事を装う》が正しい訳だ。原文はきっと、「記者たち自身がdetectiveになって」というふうに書かれているのだと思います。
 
それを遠藤誠の本では〈探偵〉と訳したが、刑事も探偵もディテクティブ。紛らわしいから英語で刑事をコップと言ったりインベスティゲーターと言ったり、探偵はプライベート・アイと言ったりなんかするが、一応、ただ「ディテクティブ」と言った場合は刑事であり、「プライベート・ディテクティブ」で私立探偵の意味になる。
 
つまり、正しい直訳は《記者たち自身が刑事となって》、すなわち《刑事を装う》が適切な訳と考えてよかろう。そしてすなわち、
 
 
遠藤美佐雄は「自分は刑事だ」と身分を偽りながらに津田沼研究所の取材をしていたということでないか。
 
藤田二郎はそれを内偵の邪魔と感じた。
 
だからそれをやめさせたくてマンロウ(マンロー)の助力を仰いだ。
 
 
という推測は成り立たないでしょうか皆さん。
 
藤田二郎が遠藤美佐雄を咎めたのは津田沼研究所の取材そのものもさることながら、刑事を装うような手段をやめろということだったのだが、しかしそこは右から左に美佐雄の耳を通り過ぎた。「権威筋の命令」というとこだけが彼の頭を反響し、《GHQが警視庁に〈七三一〉の捜査中止命令を出した》という意味に解釈される。これで色々なことに説明がつくというものだろう! これで色々なことに説明がつくというものだろう! これで色々なことに説明がつくというものだろう! 
 
でもってその後も相変わらず、
 
「警察署の方から来た者ですが」
 
とかいう取材のやり方を続けた、と。どうです。これで色々なことに説明がつくというものじゃないかとおれは思うのですが、ひょっとして《五聖閣の占い》も、この遠藤美佐雄の野郎が〈讀賣新聞〉に書いたんじゃねーのか? あんまりこういうやつ一流のスッパ抜きでやられても困るね。
 
てわけで、デイヴィッド・ピースさんのおかげでずいぶん色々なことに説明がつくというものでしたが、この本の話はまだまだ続く。だがしかし、既に長くもなったので次回のおたのしみとしましょう。それではまた。
 
銀行強盗のしかた教えます [電子書籍版]
https://books.rakuten.co.jp/rk/94423311ab9c31ce9d6fe924d0dd760c/?l-id=search-c-item-img-03

作品名:端数報告 作家名:島田信之