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アメリカ軍が〈七三一〉の実験データを得難いものとして求めたのは事実だろうが、いずれ戦争に使おうと思っていたかどうかは疑問だ。いま現在起きているコロナウイルスのパニックを見てもわかるだろうが、生物兵器は制御しようのないものであり、核より厄介で使えない。それが常識のものであり、コロナよりも致死性の高い毒を作ってバラ撒こうなど、かつての日本軍並みにイカレた軍隊、もしくはテロ組織でなければ考えも研究もしないだろう。米軍がそれを貴重なデータとしたのは、むしろ敵に使われたときの対策のためではないか。
 
〈資料〉にはそういう価値もあるということを考えるべきである。よって、国際的な犯罪などない。ここで遠藤のする話は陰謀論者の世迷い言であってすべてバカバカしい。GHQはこの事件でただ早期解決だけを日本政府と警視庁に求めており、〈七三一〉への捜査にも一切口を出していない。だから諏訪であれ誰であれ、元隊員はみな調べられている。
 
画像:のほほん人間革命254-255ページ
 
9.だれ一人として、こいつが犯人だって言った証人がいなかったんです
最初の面通しで11人中6人が「違う」と言ったのは事実らしいが、このとき平沢はそのひとりに「さあ、タテからでもヨコからでも見てくれ!」などと叫んだという。セーチョーの『小説』でも平沢は興奮していたという記述があるので、概ね事実と見ていいだろう。
 
平沢が大画家のために新聞では冤罪報道がされており、面通しにあたった者らは皆戸惑い、たじろいでいたのも疑いないことである。しかし直後にそれが変わるが、これも彼らが詐欺の件を聞き、平沢がとんでもない悪党だと知ったためと見るのが妥当だろう。一週間後に「似てる」が10に「違う」が1になるけれども、最後まで「違う」と言ったそのひとりの証言も、「いままで何人も見せられた容疑者のうちでは、平沢という人がいちばん似ている」というものだったという。
 
10.犯人が着てた服装を着せて、これでどうだ
平沢に犯人と同じ服装をさせるのを不当と思う人がいたら、それは「無実であることが絶対確かなのに」という先入観で読むからで、誤った物の見方である。面通しについてはブログに書いた『サムライ』という映画がなかなかおもしろいので鑑賞を勧める。警察がアラン・ドロンにいろんな服を着せて歩かせたりするのを殺しの目撃者十数名が見つめるのだが、しかしアラン・ドロンだから、これがなんだか面通しと言うよりもファッション・ショーみたいなのだ。
 
アフェリエイト:サムライ
 
11.若人アキラでも郷ひろみに見えますからね
若人アキラが郷ひろみと同じ服着て同じ鞄を持ったとしても郷ひろみには見えないと思う。
 
12.安田銀行荏原支店事件
松井と平沢が名刺を交換したのは1948年8月とあるが、47年4月の間違い。交換相手は128人。荏原支店は予行練習としてやったと言うが、GHQの実験だと信じる者にはそう見えるだけで、しかしそうだと考えると何から何まで理屈に合わない話である。この件について書いていったら長くなるのでここではしないが、一体そもそもなんだって予行なんか必要なのか。
 
13.思い込みの激しい警部補
名刺捜査は四人の刑事がふたりずつ二組に分かれ、東北と北海道に散らばる名刺の交換相手128人をシラミ潰しに訪ねて歩く過酷なものであったという。この占いの件については、溝呂木大祐・著『未解決事件の戦後史』には、
「なお当時、居木井は宗教的な姓名判断に凝っていたといわれている。その占いで、「平沢貞通」という名前が怪しいという結果が出たことが、居木井の背中を押したという説がある(諸説あり)。」
と書かれている。さぞかし諸説あるのだろう。さぞかしさぞかしさぞかしさぞかし諸説あるんでしょうねえ、まったく。
 
そもそも全部が成智という男あたりが雑誌に書いた嘘である疑いさえあると思うが、もし本当だったとしても、占い師は東北か北海道かと聞かれて「北海道」と答えただけではなかろうか。居木井は別に平沢とだけ会ったのでなく、北海道で会って話を聞かねばならない60人ほどの相手全員を訪ねている。セーチョーの『小説』によればまず小樽の平沢を初めの頃に訪ね、それから二週間かけて札幌、旭川、岩見沢、幌内、登別、室蘭とまわってそれから目をつけた平沢をもう一度訪ねたらしいが、これは平沢以外については、松井博士が〈函館本線〉という路線を使って北海道を名刺を配って巡ったコースを普通にたどったもののようにおれには思える。オーケンが言う「こんなことがあっていいんですか?」という要素など、セーチョーの『小説』を読む限りでは感じない。
 
アフェリエイト:小説帝銀事件
 
画像:のほほん人間革命256-257ページ
 
14.また、大騒ぎだわね
確かに大騒ぎだろう。死後に高値で売れる画家は多いが、死んだ今に平沢を無罪にできれば絵の一枚が数億円で取引されるようになるのは疑いない。ただし、無罪にできれば。
 
15.秘密警察の口封じ
バカバカしい。GHQが口封じに諏訪を殺すなら、事件直後にそのパビナールというやつを大量に与えて死なせ、そのクスリを買うカネ欲しさで帝銀をやったように見せかけるんじゃありませんかね。オーケンも「びっくりしちゃった」とか言ってんじゃねえよ、バーカ。
 
16.松本毒ガス事件のKさん
帝銀事件では、マスコミは逮捕直後は完全な冤罪報道をやっていた。平沢は大画家ゆえに無実という扱いで、
「帝銀犯人の容疑者として、はるばる小樽から護送された画家の平沢貞通氏も、二十四日夜には大体青天白日となり、二十五日朝釈放される見込みだが、東北線車中、上野駅、警視庁と、真犯人さながらに手錠をはめ、毛布をかぶせるという厳重さ。いざ疑いが晴れるとなると、この護送ぶりが問題で『あんまりひどい、かわいそうに』という街の声がしきり。(略)」
などという書かれ方だったとセーチョーの『小説』にある。しかし直後に詐欺の件が発覚し、犯人扱いに変わるのだが、むしろそれで当然だろう。平沢の場合には松井名刺や事件前にカネに困っていたことなどすべて事実であり、遠藤自身が「最後まで彼はこうでしたね」と言った通りの異常性格者だったのだ。
 
ゆえに松本毒ガス事件とはまったく事情が違う。もちろん、中にはデッチ上げ記事も多くあったろうが。
 
画像:のほほん人間革命258-259ページ
 
17.僕の友人のある検事とだいぶ前に飲んだ時
こんなことを言ってるが、だったらなんでそんなやつと友達なのか。「だいぶ前」ってどのくらい前なのか。それにそもそも、酒の席で言った言葉なのだろう。
 
だったら裏の取りようがないのをいいことに、遠藤がすべて話を作っていたとしてもわからないことである。遠藤なんかに何か話すと、「あいつはあのときこんなことを言った」と全部が全部捻じ曲げられて人に言いふらされると考えた方がよくもあろう。この男と友達になると、必ずひどいことになると思った方がいい。
 
こんな話を疑わず聞いてるオーケンこそ、遠藤誠に洗脳されてると言えないだろうか。
 
18.それだけ冤罪の証拠がありながら、検事側は認めないわけでしょ
作品名:端数報告 作家名:島田信之