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「一度でも会ったことのある人なら、なんかピンと感ずるものがある筈だが、目がどうの、鼻がどうのと、個々の道具を一つ一つおぼえているのではなく、それらが形作る全体の感じから、考えるより先に、ああこの人だ、とピンとくるのだと思います」
 
   *
 
というものになったとセーチョーの『小説』にある。
 
〈ピンとくる、こない〉ねえ。わからん話でもないけど、GHQの実験ということにしたいから頑迷に固執してるんじゃないかという疑いがないわけじゃないな。いずれにしても、これは警察のやり方がよくなかったんじゃないかと思うね。ほら、あったじゃん。『サムライ』っていうアラン・ドロン主演の映画。あれみたいに年恰好の似ている者を30人ばかり集めてだね、それを6人くらいずつ、並び立たせて平沢を三列目か四列目に混ぜてやるんだ。そうやってりゃ11人が11人、
 
「あれです! あいつです!! 絶対に!!!」
 
と最初の面通しで叫んだんじゃないかという気がおれはするんだけど、どうだろう。これはわからないですね。
 
アフェリエイト:サムライ(ブルーレイ)
 
それに、この映画では――いやいや、しかしそれにしても、同じ服着て同じ鞄を提げたなら若人アキラが郷ひろみに見えるだろうか。おれにはたぶん、若人アキラが郷ひろみと同じ服着て同じ鞄を提げてるようにしか見えないんじゃないかと思うが、オーケンさん、大丈夫ですか。
 
――と、けれども逮捕が現行犯なら、こんな苦労はしなくていいのです。てわけで、こちらのシリーズをどうかよろしく。
 
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作品名:端数報告 作家名:島田信之