北へふたり旅 26話~30話
北へふたり旅(30) 第三話 ベトナム基準⑩
シゲ婆さんはお節介。よくいえば面倒見がいい。
しかし、ときに度が過ぎる。
傍目で「おや?」と首をかしげるときがある。
暑さが増してきた朝。
シゲ婆さんが保冷用の水筒を2つもってきた。
テプとドンへ使い古しの水筒を差し出す。
「孫たちが使っていたもんだ。もう使わないそうだ。
もったいないから持ってきた。
すこし傷があるが、使えないわけじゃないさ。
遠慮しないで使っておくれ。
必要だよ。これからもっともっと、暑くなるからね」
たしかに古い。
顔を見合わせたテプとドンが、しぶしぶ水筒を受け取る。
あまりうれしくないプレゼントだ。
食べ物ももってくる。パンがおおい。
独自のルートから、孫たちのために仕入れているという。
パン工場へ勤めている知人が、格安でもってくる。
従業員はパンが喰い放題という話はよく聞く。
しかし、外部への持ち出しは許可されていないはずだ。
誤魔化してもってくるのだろうか?
種類は指定できないが、ビニール袋いっぱいのパンが500円だという。
作品名:北へふたり旅 26話~30話 作家名:落合順平