北へふたり旅 26話~30話
「そうですねぇ。ざっとで25万前後。
先日のドライバーも下取りするとして、20万前後になります」
(20万前後か・・・妥当だろうな)
ほぼ40%オフの金額だ。定価で揃えれば40万をこえる。
ゴルフクラブの使用期間は長い。
新機種を買っても1年か2年先で、過去のモデルになってしまう。
それなら人気モデルを新機種の発売前に、駆け込みで買うのもひとつの手だ。
「妻とまた来る。それまでに揃えておいてほしい」
「一週間も有ればそろいます」
「ずいぶん商売熱心だ。
だいじょうぶ。そんなに忙しい話じゃない。
一ヶ月くらいしたら連れてくる」
「お待ちしております」
笑顔のクラフトマンに見送られて店を出る。
年金と農家のパート収入の身には、ずいぶん高い買い物だ。
しかし財源に当てがある。
趣味でつづけている500円玉貯金。
それがお茶の缶、いっぱいになっている。
500円玉貯金には、コツがある。
成り行きに任せていたのでは、いつまでたっても貯まらない。
500円玉のお釣りをいかにもらうかが、カギになる。
650円の買い物なら、千円札と小銭を150円出す。
お釣りはちょうど500円。
かんたんな暗算とすこしの工夫が500円玉をうみだす。
慣れてくると高度な技もある。
1378円の合計に、1933円をさし出す。
「え?。何考えてんの、このおじさん」レジのおばちゃんが首をかしげる。
レジに打ち込む。すると、555円のお釣りが出てくる。
「なるほどね」いつものおばちゃんがあははと笑う。
ありがとうとこたえ、いつものように農協系スーパーをあとにする。
(28)へつづく
作品名:北へふたり旅 26話~30話 作家名:落合順平