北へふたり旅 26話~30話
元旦の早朝。初日の出といっしょにスタートするゴルフコンペがある。
のんべぇたちの発案だ。
年末の打ち納めがあるなら、初日の出を見ながらのコンペがあっても
いいだろうということで、2年越しのゴルフがはじまった。
12月31日は参加できない。
1月1日なら大丈夫ということで、2人で参加するようになって6年が経つ。
「あっ・・・」あることに気がついた。
妻は骨折する前、長年愛用してきたドライバーを取り替えた。
きっかけをつくったのは、ひとまわり下の美女。
「ゼクシオ※が世代交代するの。
いまなら40%オフの5万円でドライバーが買えるわ」
※2000年に誕生したゴルフクラブの国産ブランド。
2018年秋、10代目になるゼクシオ10が発売された※
9万円をこえるドライバーが、40%オフの5万円。
妻は2つ返事でこの話にとびついた。
このとき買ったドライバーのシャフトの硬さは、「A」
「A」はアベレージの略。すこし力のある女性向け。
ヘッドスピードは、32~36m/sが目安になる。
女性用はもうひとつある。Aよりもやわらかい「L」。
レディースモデルのクラブはほとんどがこの「 L」シャフト。
ヘッドスピード(振りの速さ)に応じて、シャフトの硬さが設定される。
体格がよく、体力に自信があり、ヘッドスピードの速いゴルファーが、
柔らかいシャフトを使用するとシャフトがしなりすぎてしまう。
そのためにタイミングがあわなくなる。
ボールにうまく力が伝わらないことで、飛距離も落ちる。
ヘッドスピードが遅いゴルファーが硬いシャフトを使用すると、
シャフトがしならないため、やわらかいシャフトより曲りは少なくなる。
しかしそのぶん飛距離が落ちる。
妻のシャフトは、すべて「A」。
妻は10代の頃、本気でボウリングのプロを目指していた。
1970年代の前半。
女子プロボウラーの人気は、いまの女子プロゴルファーよりはるかに熱かった。
女子プロ1期生の須田開代子と中山律子は、人気アイドル以上の存在だった。
彼女たちがテレビに出ない日はなかった。
自分の限界を知った妻が、20歳を前にボウリングをあきらめた。
つぎに出会ったのがゴルフ。
ボウリングは左で投げたが、ゴルフは右で打った。
妻が練習をはじめたころ。左用のレディスクラブはほとんどなかった。
さいしょから右打ちのレフティとして、ゴルフに取り組んだ。
(このまま握力がもとに戻らなかったら、まずいことになる・・・)
(27)へつづく
作品名:北へふたり旅 26話~30話 作家名:落合順平