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北へふたり旅 26話~30話

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北へふたり旅(26) 第三話 ベトナム基準⑥

 退院から一ヶ月が過ぎた。妻の握力はゆるやかな回復をみせている。

 「あなたに残念なお知らせです。
 今晩からお風呂にふたりで入れません。右手が使えそうです。
 ごめんなさい。突然の悲しいお知らせで。うふっ」

 元に戻っていない。しかしタオルくらいは使えるという。

 「そうか残念だ。
 となると今夜が君の見納めになるのかな」

 「あら。今日も洗ってくださるの?。
 そういうことなら、明日からひとりで入ります。うふふ」

 「三助の卒業試験ということで、妥協してくれ」

 「助かります。
 実はまだ、しびれがはしる時があるの」

 「そんなことで大丈夫か?。
 正月恒例の、初日の出コンペがあるんだぜ。
 間に合うのか、君の右手は?」

 「3ヶ月あるでしょ。
 なんとかなるでしょ。それまで」