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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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このコーヒーを飲み終えたら

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(紗英や隆志が死んでしまったのは間違いなさそうだ。それを受け入れられない僕は、精神的に不安定で、よく3か月も無事に生活が送れたもんだな)
 涙が込み上げてきた。思いっきり泣くことにした。そうする方が正気でいるという証の様な気がして・・・

(いや、僕自身存在しているんだろうか? もう死んでしまっているのは僕の方なんじゃ無いだろうか? 妻や息子なんて本当にいたのかな?)

(それに、松井かなみは実在するのか? 僕は、下村達也? 下村? あれ? 自分の名前もハッキリしない。松井・・・)

(思い出した。松井かなみは、母さん。そうだ母さんだ。僕が小学校の時に、家を出て行った母さんの名前じゃないか。僕は夢を見ているのか? そうだ夢だ。これはまさしく、全部夢の中だ!)

 達也はそう考えて、目を覚まそうともがいた。
(段々状況が分かってきたぞ。僕は今夢を見ているんだ。起きなきゃ。あれ起きれない。・・・どうやっても起きられない・・・)

 その時、コーヒーの匂いに気が付いた。周囲を見回すと、ダイニングテーブルにコーヒーカップが置いてあり、湯気が上がっていた。
(あれも幻覚。夢の中の出来事だ。こんなにハッキリした夢って珍しいな)
達也はテーブルに近付き、コーヒーカップを手に取った。
「うーん。いい匂いだ」
そう言って、カップに口を付けた。