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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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このコーヒーを飲み終えたら

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『加田耕三、北田麻衣、千田明弘 林文美』
(どういうことだ? カウンセリングのメンバーばかり)
さらに『下村紗英、下村隆志』・・・達也は思わず手に持っていた缶を、地面に落としてしまった。
「これは! 一体どういう事なんだ!?」
「全部私が悪いの」
「え? どういう意味?」
「私が置き石をしたから」
「君が? 何を言ってるんだ?」
「隆志君が乗ってるって知ってたから。驚かそうと思って・・・」
「そ、そんなはずないじゃないか・・・・・・置き石の犯人は自殺したって」
「・・・私自殺なんかしてない」
「そりゃ、ここにいるんだから・・・・・・!」
達也はハッと我に返り、
(そんなことより、妻と息子の名前がここに刻まれている。そのことの方が・・・)
達也はポケットからスマホを取り出し、その場で紗英に電話を掛けた。
(・・・この番号は現在使われておりません)
「隆志・・・」
(この番号は現在使われておりません・・・)
驚きに目を見開いたまま、SNSのメッセージのやり取りを確認した。
しかし、3か月前で履歴は途切れている。先週の土曜日、本城奈美恵が自宅を訪れた時、隆志に送ったメッセージも、既読になっていない。
本城奈美恵に何か聞こうと振り向くと、彼女はその場から消えてしまっていた。

 工事用車両に飛び乗り、車を発進させた。達也の行動に側にいた同僚たちは、呆気にとられながら、走り去るバンを見送った。達也は自宅に向け、喉の奥から勝手に出てくる慟哭のような声を抑えられないまま、真っ直ぐ前を見て運転した。幸い通勤ラッシュのこの時間帯は、高宮方面に渋滞が続いているが、達也が走る郊外に向かう道は空いていた。
 荒々しく自宅の前に駐車して、急いで玄関に駆け付けたが鍵はかかっている。まだ隆志が登校前だからか、それとも元々誰も居なかったからなのか。
 達也は鍵を開けて、急いでドアを開けた。
「ただいま!」
そう叫んでみたが、返事がない。リビング、ダイニングキッチン、トイレ、バスルーム・・・どこにも誰もいない。
「紗英ー! 紗英ー!」
そう呼びかけながら祈るような気持ちで、階段を駆け上がった。妻の寝室、息子の部屋、自分が普段寝ている和室。どこにも誰もいない。廊下に立ち尽くし、全身を震わせながら、達也は涙を流した。そして崩れるように座り込み、悔しそうに握りこぶしを床に着けて、嗚咽を漏らして泣いた。

 暫くして達也は、隆志の部屋のドアを見ながら、自分が精神的に病んでしまっていることを悟った。
(もう二人はこの世にいないのか。それを自分は受け入れられずにいるだけなのか)