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北へふたり旅 21話~25話

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北へふたり旅(21) 第三話 ベトナム基準①

 入院から4日目。妻が退院した。
途中スポーツショップへ寄り、一番やわらかいゴムのボールを買って来た。

 「こんなやわらかいヤツで、ホントにいいの?。
 ほら。フニャフニャだぜ」

 「このくらいでいいの。
 生まれたての赤ちゃんの握力ですもの」

 かるく握りしめただけで、ゴムのボールが半分になる。

 「それよりあなた。たいへんです、今夜から。
 ふたりでお風呂にはいるなんて何年ぶりかしらねぇ。
 怪我の光明というのは、こういうことをいうのかしら。うふっ」

 そうだ。妻の右手はまだ使えない。
手首にうっすらと、黒い充血がのこっている。
風呂へはいる許可は出たが不具合の手では、身体を洗うことができない。
「そうか。そうなると、とうぶん新婚だな。おれたちは」
聞こえる様につぶやくと、「そうね」と妻がまたわらう。

 「復帰まで、はやくて3ヶ月。
 年齢もありますので、もうすこし、長くかかるかもしれません。
 ゴルフですか。痛みがなければ、それなりに振れるでしょう。
 いいですねぇ。ご夫婦で共通の趣味があることは」