『封魔の城塞アルデガン』第3部:燃え上がる大地(後半)
厭わしかった、呪わしかった、おぞましかった。
だが、この軋みが、苦しみがいつまでも続くとしたら……。
耐え難い恐ろしさだった。
”苦しみから解放されるには、やはり誰かの手で解呪されるしかない”
ゴルツの末期の言葉がよみがえった。
”せめて、その日がすみやかに来ることを祈らせたまえ……”
アラードはいつ来てくれるの?
解呪の技を修めることができるの? できなかったら?
私のことなど忘れてしまったら?
……死んでしまったら……?
足下にぽっかり虚空が口を開けたのをリアは感じた。深淵から冷たい虚ろな風が吹き上げた。
人間の魂など永遠というものに耐えられはせぬ。深淵からの、虚ろな風がそう告げた。
「アラード! 助けて、早く! 誰か……っ」
天を仰いでリアは叫んだ。だが、その悲痛な叫びは酷薄な風に吹き散らされた。
はるか背後の北の大地は荒野を焼く炎に赤く、魔物たちの群がめざす南の大地はいまだ暗黒に閉ざされている。では炎がいずれ燃え尽きたなら、全てはもはや暗黒に呑まれるだけなのか。
リアはひとり天地の狭間に立ちつくし、ただ深淵と虚ろな風に心おののかせるばかりだった。
作品名:『封魔の城塞アルデガン』第3部:燃え上がる大地(後半) 作家名:ふしじろ もひと