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教えて泥棒さん.あなたは自分からは何を盗むの〜【唐草三五郎】

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「唐草三五郎、参上!やっぱり ここに飛んできた わしの大切なお宝。そうれ ぬすむぞ」
聞いたことのある低い声がしたと思ったら、ふわりと高く、抱きあげられていました。

気がついたら、家の中のベッドの上。となりで 父さんがいびきをかいて寝ていました。
時々、楽しそうに、寝言をいっています。
「ムニャムニャ、ぼくのお宝、盗んだのはだーれ。
はいはい、それはわしです。ごめんなさい。ムニャムニャ」


<転~本当の家>


少したって、世界中から、驚きと喜びの声が、聞こえはじめました。
盗まれていたものが、次々ともどりはじめたのです。

あのリッチェストさんは、もどってきた時計に 何度もほほをこすりつけながら 大切に首にかけました。小さな家での貧しい生活となってしまいましたが、その顔は、前よりも幸せそうでした。


いつのまにか、唐草三五郎は、いなくなっていました。

自分で 自分の宝物を盗んだのが、運のつき。頭がこんがらかって どろぼうではなくなってしまったのです。
もしかしたら、もう、心は空っぽではないことに気がついて、どろぼうをする必要がなくなってしまったのかもしれませんが・・。


そして、モエちゃんは・・

ある朝、目が覚めたら、部屋の中の様子が、がらりと変わっていました。

自分が横になっていたのは、こびとが寝るような小さなベッド。
窓には、ピンク色のかわいいカーテンがひかれ、壁には、どこかで見たことがあるような赤ん坊の写真がかけられています。これまでの大きなベッド、古びたうす暗い部屋とは大ちがいです。

いつも聞こえていた波の音もきこえません。代わりに聞こえるのは、ブンブンと走る車の音。まるで、にぎやかな町の中のようです。

「いったいここは?」
柔らかい毛布から起きだしたところに、ドアを開けて、女の人が入ってきました。
モエちゃんを見て、目玉を白黒、顔を青くしたり、赤くしたりしています。しまいに、大泣きして叫びました。

「あなた、あの子が、帰ってきたわ!」

ああ なんてこと。
モエちゃんも、盗まれた宝物の一つだったのです。

お母さんと、本当のお父さんは、仕事に夢中になって、赤ん坊だったモエちゃんを、おばあちゃんの家に、あずけっぱなしにしていたのです。安心しきって、大切ということを、すっかり忘れていたのです。
そこに、唐草三五郎がやってきたのでした


「お父さん、お父さん、三五郎さん・・」
お母さんと、本当のお父さんに抱きしめられながら、モエちゃんはずっと泣き続けました。

・・ありがとう。ぼくのすてきな宝物

君との出会い、過ごした日々が わしの すてきな宝物~唐草三五郎・・・

床におちていた唐草模様の小さなカード、にじんだ墨で、文字が書いてありました。



<結~再会>

時というものは、誰にも止められることなく流れていきます。

月が地球をまわり、地球が太陽をまわるたびに、一つの思い出は 色をうすめ、新しく あざやかな思い出が 生まれていきます。

中には、しっかりと心に刻まれている 思い出もあるかもしれません。
それが すてきなものならば、きれいな額に入れ、飾ってあげるのもいいかもしれません。
バスケットに入れて、ピクニックに連れていってあげるのもいいかもしれません。
もちろん、そっと胸にしまっておくのが、一番かもしれませんが・・


さてさて ここは、とある日本の 小さな島。
最近、不思議なお店ができて、評判を呼んでいます。だれがやっているのかはわかりませんが、きちんと電話帳にのっています。

【心のお宝、発掘屋】

あなたの大切な宝物、忘れてしまったら、こちらへどうぞ。きっと探してさしあげます。
電話番号は 41#-3560-552#

ある日、一人の若い新聞記者が、このお店の取材にやってきました。とてもきれいな女の人です。

「連絡をしていた者ですが、ご主人はおられますか」
ドアをノックして 声をかけました。

「はいはい、わしが、ここの主人です」
出てきたのは、優しそうなおじいさん。
だけど、背筋はびしっとのびています。としはとっていますが、まだまだ元気そう。こそっと、人の家に忍び込むことだってできそうです。

「お話を聞かせてくださいな」
「えーはい、どうぞ。さて、何からお話ししましょうか」              

二人がついたテーブルの上、藤で編まれたカゴの中には、女の人が大好きだったマシュマロパイが、山ほどに積まれていました。                  


おしまい