きみの見る世界【詩集6】
ちいさなアーティスト
ちいさなアーティストと私はふたりで海の見える小高い丘の上に登り
草の上に座って風に吹かれながら海を見ている
時は夜
街の明かりが宝石のようにきらきらしている
灯台は明かりをともして
暗い海を航行する船舶を導く
暗い夜空を切り裂くように力強く海を照らして
時折挨拶を返すように汽笛が鳴る
降るような星空を見ながら
私は隣に座るちいさなアーティストに話しかける
心配しないで
何も怖いことはないから
教えて?
あなたは何がしたいの?
何がすき?
幼い子どもは私の方をちらっと見ると俯いて
とつとつと話し始めた
本当は外に出たいの
絵を描いたり、すてきな物語を書いたり
おともだちと自由に思ったことを話したり
かわいい服も着たい・・・でも女の子を押し付けられるのはイヤ
女の子はおもちゃでも飾りものでもない
ひとりの人間だから
私には許されなかった
女の子はこう振る舞うべき
女の子はそんなことを言ってはいけません
何かにつけてそう叱られた
自由ってなに?それはわがままなの?
私には許されないんでしょう?
幼ない子どもは傷つけられることを恐れるあまり
一歩も外へ出られなくなった
世界は無神経で容易に人を傷つける存在に溢れているから
子どもは二度と傷つきたくないと言う
暗い目をして顔を背けて涙を浮かべて訴える
本当は光溢れる外の世界へ出て
新鮮な空気を胸一杯に吸い込みたいのに
暗い獄(ひとや)の奥で
手に持った扉の鍵を使うこともできずにうずくまり
諦めないで
あなたは自分でその鍵を開けることができる
外に出ることができる
恐れないで
私がいる
勇気を出して
私はあなたが大好きだから
弱いところも鈍臭いところもあって
時にはうまくやれないとしても関係ない
私はあなたを愛している
抱きしめて愛を伝えよう
だからあなたも私を愛して、私を信じて
無理しなくていい
自分を好きにならなくてはならないことなどない
無理することはない
ありのままの自分を受け止めて
目を逸らさずに
すべてを許して
何かできることが愛される条件じゃない
あなたはそのままでただ生きているだけでいい
すなおになって
できないことがあってもいい
背伸びしなくていい
それがあなた
ありのままでいい
作品名:きみの見る世界【詩集6】 作家名:maki