北へふたり旅 16話~20話
北へふたり旅(20) 第二話 チタン合金 ⑩
先生の説明通り、翌日から妻のリハビリがはじまった。
午前10時。担当の看護士が病室へやってきた。
「おはようございます。
時間です。リハビリ棟へ案内します」
「痛いんでしょ?。リハビリは・・・」
「どうでしょう。痛いかもしれません。
担当者の腕次第ですけど。うふっ」
看護士が笑顔で答える。
「でも。はやくから動かしたほうが、痛みがすくなくてすみます。
ギブスで3ヶ月間固定したあとですと、すこし動かすだけで涙が出ます。
2日目ですもの。それから比べれば、お茶の子さいさいです」
「よく知っていますねぇ。お若いのに。
おちゃのこさいさいなどという、ふるい言葉を」
「これ、先生の口癖です。
手術するまえ、呪文のようにとなえています。
この言葉を口にすると緊張がほぐれて、なぜかうまくいくそうです」
「では行きましょ。
わたしもおちゃのこさいさいで。うふっ」
作品名:北へふたり旅 16話~20話 作家名:落合順平