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ふしじろ もひと
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novelistID. 59768
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『封魔の城塞アルデガン』第2部:洞窟の戦い 前半

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 思わず叫んだアラードだったが、あとの言葉が続かなかった。それでも華奢な少女は我に返ったようだった。
「すみません。覚悟はしていたつもりだったんです。助かるはずなんてないと……」
 リアは立ち上がった。濡れた瞳に悲愴な決意が満ちていた。
「これで覚悟がつきました。私は地上へは戻りません。もう帰ってはいけないんです! この洞窟こそが死に場所です!」
 二人を見つめる空色の目に、あの激しい光が宿った。
「決してこの洞窟から出してはいけません。私も私を襲ったものも! どちらも滅びなければならないんです! 最後まで戦って死にます。もう誰もこんな目にあわせないために!」
 蒼ざめた顔が真正面からゴルツに向けられた。
「いよいよの時は、私の魂をお守りください」
「もとよりそれがわしの務めじゃ、その高き魂を守ることが」
 アルデガンの大司教が少女の前に膝まづき、手を取った。
「その身の滅ぶ時、必ずそなたの魂を神の御元へ還す!」
 ゴルツの誓いにリアがうなづいた。


 ---その高き魂こそ守られなければならない---
 アラードの心に、その言葉がこだました。
 ガモフのように空っぽのまま甦るリアの姿が、牙を剥いて迫る顔の冒涜的な幻影が彼を脅かした。
 失わせてなるものか、魂を。たとえどんなことをしてでも!
 アラードは考えもしなかった、己の思いがリアやゴルツと僅かながらもずれ始めているなどとは。