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バールのようなもの
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novelistID. 4983
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おおきな桜の樹の上で(Ten years after)

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校舎の時計からチャイムが響いた。午後五時だけに鳴るメロディ。帰宅の合図だ。

「紗枝、帰らなくていいの?」
「え?」

空が西側ではなく、東側から赤くなっているのに気付いた。これはきっと朝焼けの赤だ。
携帯のアラーム音がゆっくり近づいてきて、チャイムと重奏する。

「お母さんが心配するんじゃないの?」

「あー…うん、そうだな。帰らなくちゃ」

私は樹から降りてランドセルを背負い、まだ枝の上にいるまどかを見上げた。

「またね」

まどかが手を振る。逆光で顔は見えない。でもどんな顔をしているのかは、なんとなく分かる。私も手を振り返した。

「じゃあ、また」

目覚めの倦怠感のなかで、桜の樹が遠ざかっていく。ぼんやりと薄れていく記憶のなかで、これだけは忘れないようにと繰り返した。

また遊ぼう。今度の休みは帰省するから。夢から覚めたら、電話をするよ。