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オオサカタロウ
オオサカタロウ
novelistID. 20912
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Joint

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 オレンジジュースを飲み干した明日香は、紙パックを握りつぶして、ごみ箱に捨てた。朝になれば日が差して、勝手に一日が始まる。しかし、それを家族全員で迎えられるというのは、普通なようで特別なことなのだ。
 丈治さんが死んだことで、これからはそれが日常になるのかもしれない。
    
 朝九時、朝ご飯の準備が終わる直前に、由美が火を止めるのを見ながら、包丁をシンクへ入れて手を拭き上げた明日香が言った。
「みんな、ちょっと店の前に並んでほしい」
 まだ完全には起きていない智博が、眠そうな顔のまま明日香を見上げた。由美は、トイレから出てきたばかりの義彦に言った。
「お父さん、店の前に並んでって」
 義彦は、奇襲攻撃を受けたように、大げさな表情を作った。
「今? 今か?」
「そう」
 由美はそう言うと、明日香のやろうとしていることを一人だけ理解しているように、圭一を呼んだ。サラダを両手に持っていたが、圭一はそれをテーブルに置くと、鏡で寝ぐせがないか確認し始めた。
「マジで、今?」
 全員で一階に降りて、店の前に立つと、明日香が少しだけ前に出て、左手に持った細長い棒を見せた。圭一が、朝日に目を細めながら笑った。
「姉ちゃん、自撮り棒とか使うんや」
 先端にスマートフォンを取り付けた明日香は、自撮り棒を掲げた。義彦がようやく意図に気づいたように、薄くなった髪を後ろになでつけたとき、由美が言った。
「今ので余計、隙間空いたかも」
「撮るでー」
 明日香は、シャッターを押した。写真を確認しながら、圭一と義彦が自分たちの顔つきを笑い、由美が散らかった義彦の頭を指先で調整した。智博は何が起きたのかあまり分かっていない様子だったが、大人は皆、撮り直しを望んでいるようで、明日香も化粧をしていない自分の顔は不本意だったが、スマートフォンをしまいながら言った。
「はい、戻りましょう。ご飯、冷めるから」
 明日香は、一列になって二階へ戻っていく全員を見送りながら、最後にドアを閉めた。
 わたしが言わないこと。圭一が忘れないようにしていること。お父さんとお母さんがやってきたこと。色々あるんだろう。
 でも、どれだけ曲がりくねっていても、行き過ぎてから振り返れば、それはいつだって、一本の道だ。
作品名:Joint 作家名:オオサカタロウ