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北へふたり旅 1話~5話

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 紫色の花をつけてから15日から20日目が、収穫のタイミングになる。
長さは12㌢から15㌢。重さは80~120グラムが目安になる。

 しかし。ハウスの中で長さやは重さは測れない。
どうするかというとおおきさに達しているかどうかを、手のひらで確かめる。
ヘタの部分を上に出して握る。
このとき。ナスのお尻が手のひらからはみ出れば、収穫サイズと
いうことになる。

 素人は、この動作を何回も繰り返す。
熟練してくればおおきさを、瞬時に見抜くことができる。
しかし新人には至難の業。
この動作を際限なく、何度も繰り返すことになる。

 右手はハサミをつかう。
そのため、確認していくのは左手の役目。
朝の6時から収穫をはじめる。おおいときは12時ちかくまで作業が続く。
にぎりしめる数は、700~800回をかるく超える。
左手がパンパンになる。しびれてくる。腱鞘炎になりそうだ。

 「ありがとう。いい写真がとれました。じゃね」

 笑顔をのこし、おばちゃんが急ぎ足で去っていく。
バタンとハイブリッド車のドアが閉まり、音もなく農道を遠ざかっていく。
まさにあっという間の出来事だった。

 (忙しいおばちゃんだ。
 それにしても何が起きたんだ?。いったい、ぜんたい・・・)

 事態が理解できないわたしは、呆然としたまま白い車を見送る。
白はもっとも汚れが目立つ色。
街中なら違和感はない。しかしここは、衣服がもっと汚れる
ビニールハウスの中。
だがこのときのわたしの疑問はのちにM君によって、氷解する。

 「白はおばちゃんの制服だ。
 おばちゃんがおもに足を運ぶのは、人手をほしがっている県内の中小企業。
 技能実習生をいろんな企業へ派遣しているからね。
 農家へ実習生を紹介するのは、はじめてだ。
 おばちゃんこそ白の制服のまま、ホコリだらけのナスのハウスへ
 飛び込むんだ。
 さぞかし勇気を必要としたことだろう。あっはっは」
 
 (3)へつづく