神宮球場の精霊(ライダー!シリーズ・番外編)
岡田氏は、その状況を打破しようとファンを少しでも多く見せるために傘を使った応援を考案し、声援の大きさでも圧倒するジャイアンツファンに対抗するためにメガホンを使った応援や中華鍋を叩く応援を考案し、スワローズを愛し続けた。
今でもスワローズのホームゲームでは、神宮球場のライトスタンドに有志による祭壇が設けられるほどに愛された、伝説の応援団長である。
今、光り輝いているのは正にその祭壇が設けられた一角なのだ。
その不思議な出来事に球場全体が静まり返ったが、口伝がさざ波のように広がって行った。
「あそこは岡田さんの祭壇だよ」
「岡田さんの霊が降りて来たんじゃないか?」
「岡田さんが神宮を守ってくれようとしているんだ」
そして、セイコの頭の中に語り掛けて来る者がいた、もちろん岡田氏の霊だ。
(今、球場全体が一つになったよ、みんな神宮を、スワローズを、プロ野球を守りたいんだ……その『気』をお前さんに託すから、どうかあの忌まわしい蛇と不遜な中国人を退治しておくれ……)
岡田氏の両脇では、最近になって天国に旅立った二人の元監督もで力強く頷いている。
(ええ! 力の限りやってみます!)
セイコは精霊の言葉にそう応えると、全身を使って出来る限り大きな五芒星を宙に描く、するとそれは球場全体から気を集めて光り出した。
「まだよ、もっとよ、神宮を、スワローズを、プロ野球を守るために、みんな、もっと力を貸して、もっとここに気を集めて!」
セイコがそう叫ぶと光は強さを増し、五芒星はまばゆいばかりに輝きを増して行く。
「今よ!」
セイコは右掌に気を集めて五芒星を突く、すると五芒星は鋭い槍となって飛んだ。
「ああああっ、ヴァイパー、しっかりするアル!」
蛇ゆえに声こそ出せないが、光の槍を頭に受けたヴァイパーは激しく痙攣したかと思うと、グラウンドに伸びてしまい動かなくなった。
「い、いかんアル! お、お前たち、撤退するアル……よ?」
マンジューは戦闘員を呼び寄せて自身を守らせようとするが誰一人集まらない、それもそのはず、グラウンドには50人を超える屈強な野球選手たちがいてバットやボールを手にしている、戦いに慣れている戦闘員と言えどもその運動能力の敵ではなかったのだ。
「ま、まずいアル……」
マンジューは狼狽したが、そこはさすがに魔術師、足元に煙幕弾を投げつけると煙と共に姿をくらませてしまった……。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「今日のヒーローはシンジ選手です! 攻守にわたる活躍もさることながら、身の危険を顧みずに大蛇に立ち向かった勇気! まさにヒーローの活躍でした!」
予期せぬ中断の後に再開された試合はスワローズが勝利し、今日のヒーローに選ばれたシンジはお立ち台に上がると、招待した施設の子供たちに大きく手を振った。
その頃……JRの車内にはつば九郎の着ぐるみが周囲の注目を浴びながら座席に腰掛けていた。
フー・マンジューは煙幕で一旦姿を隠した後、つば九郎の着ぐるみに入って球場を脱出したのだ、そして車の運転が出来ないマンジューはショッカーのジープに乗って逃げることが出来ずに電車に乗っている……。
(日本人、押せば退く大人しい民族と思っていたアルが、怒らせると怖いアルな……)
そう心の中で呟きながら……。
作品名:神宮球場の精霊(ライダー!シリーズ・番外編) 作家名:ST