いつか君が前を向く日まで
【タイトル】 いつか君が前を向く日まで
【登場人物】
省吾(14歳) 中学二年生 主人公
しまくん(5歳) 猫
櫻 (17歳) 省吾の姉
浦島(30歳) 警官
クロッチ(4歳) 黒猫
爺(88歳) 軽自動車の運転手
春野 静香(14歳) 省吾の同級生
優 (14歳) 省吾の同級生
交通部交通課の職員(50歳)
〇 省吾の家 台所 午前七時
食卓テーブルの椅子に座りゲームに熱中している省吾(14歳)
食卓テーブルの上、省吾の隣で猫のしまくんがニャーニャー言っている
しまくん「今日、櫻姉ちゃん、どこへも行かないほうがいいよ」
省吾、チラリと見るが、再びゲームに夢中になる
食卓テーブルの向かい、台所調理器具の前で姉の櫻が学生服の上にエプロンを羽織って目玉焼きを作っている。
しまくん、省吾にニャーニャーと叫んでいる。
しまくんの鳴き声が気になる様子の櫻。
櫻、食卓テーブルにご飯と目玉焼きを置いて
櫻「しまくんが省吾にさっきから何か言っているけど聞いてあげたら。あんた猫の言葉が分かるんでしょ」
省吾「判る、といよりもしまくんがぼくに日本語でしゃべりかけてくるんだ。」
櫻「あ、そう。で、なんていってるの」
省吾「しまくんが姉ちゃんに学校行くなって」
櫻「ははは。不登校のあんたじゃあるまいし、家の中に不登校が二人もいたら赤字路線まっしぐらよ」
櫻「(エプロン外し)先、いくね」
省吾「姉ちゃん、朝飯食べないでいくの、力尽きて死んじゃうよ」
櫻「バイト先で食べるからいいの。それよりもう半年になるけど、アンタ、まだ学校行く気ないの?」
省吾「(食べながら)ぼくの足が学校方面にいくのを拒否してんの。無理でやんす。」
しまくんがまた、ニャーニャーいう。
しま「櫻ねえちゃん、どこにも行っちゃだめ」
櫻「また、しまくん何か言ってるよ。鰹節がないって怒ってんのかな」
省吾「(しまくんの頭をなでなでしながら)鰹節が食べたいのか。」
しまくん「違う!櫻ねえちゃんに行かないでって言って」
しまくん、櫻の服を叩く。
櫻「こんどは?」
省吾「鰹節が食いたいから早く買ってこいって」
省吾、しまくんの頭をなでなでする。
櫻、自分の顔写真が貼ってある『フォトミラー』を開いて自分の顔を見る。
櫻「よし、メイクばっちり」
省吾「女子高生なのにお化粧なんかしていいの」
櫻「バイト先では必要なの。でも学校行く前にはメイク落とすから大丈夫よ」
櫻、玄関に向かう
しまくんのアップ。しまくん、少し心配顔。
〇 交通量の多い交差点 街の中
櫻、信号機のある横断歩道の前で待っている。
猫のクロッチが櫻のそばに寄ってくる。
クロッチ、櫻を見上げる。
櫻、気が付き、しゃがんでクロッチの頭を撫でる。
信号が青に変わる。櫻、見る。
櫻、横断歩道を急いで歩く。
シルバーマークの軽自動車、急スピードを出しながら横断歩道に突っ込んでくる。
櫻と衝突をする。
櫻、路上に倒れる。櫻の『フォトミラー』が鞄から外れて路面に転がる。
運転席から老人が顔を出す。
猫のクロッチが見ている。老人と目が合う、。
すぐ引っ込めて猛スピードで逃げる。
クロッチ、軽自動車を追いかける。
〇 省吾の家 省吾の部屋
省吾が机の上に上がっているしまくんの顔をじっと見ている。
省吾「しまくん、なんで日本語話せるの」
しまくん「猫はねぇ、この世に使命感を受けて猫の世界から降りてくるんだよ。」
省吾「使命感!」
しまくん「そうさ。君みたいな登校拒否児の意見を聞いたり介護老人施設に入り込んで塞ぎこんでいるお年寄りの気持ちを癒したり、自殺をしようとか生きることに希望を見い出せない人たちの前に降りてきて元気を出してもらうのが我々猫の使命なのさ。」
省吾「じゃどうやってするのさ。」
しまくん「君の場合、頭の中をコントロールして、学校へ行こうという気にさせるのさ。だから、いじめがあっていきたくないとか、いやな先生がいるとか、勉強が嫌いだからとか、理由は頭から消えちゃうのさ。いじめがあろうが勉強が嫌いだろうが、学校へ行きたい、という気にさせるのさ。勝手に足が学校へ向くように脳内改造をさせるのさ。」
省吾「フーン。実際にはどうやんの」
しまくん「こうやって(前足で省吾の頭を押さえ自分のおでこにくっつけ)ぐりぐり、しながら猫魂を注入するのさ」
省吾「じゃ、ぼくにやってみせてよ」
しまくん、やって見せる。
しまくん「どう、変わった?」
省吾「全然変わらんな。なぜだろ」
しまくん「言うの忘れとったが、完全なあほには効き目がないんです」
省吾「ぼくはあほ、か」
しまくん「あほが、証明されただけでもありがたいと思えや。それより、鰹節買ってきて」
省吾「はいはい」
省吾、リュックを背負って部屋を出る。
しまくんの顔。
しまくん「あ、鰹節どころじゃないんだ!」
しまくん、廊下の猫ドアからダッシュしてでていく。
〇 通学路
学校へ登校する中学生たち。
すれ違うように逆方向へリュックサックを背負って歩いている省吾。
〇 街 商店街
行きかう人ごみの中に省吾がスマホでゲームしながら歩いている。
警邏中の自転車に乗った警察官、浦島(30歳)とすれ違う。
浦島、自転車を降り省吾に追いつく。
浦島「きみ、きみ」
省吾「(立ち止まり)きみって、僕のことですが」
浦島「君は中学生だろ、学校は」
省吾「あ、そのことですか。僕は自慢じゃないですが登校拒否児、つまり不登校児童です。では急ぎますので構わないでください」
浦島「そういうわけにはいかないよ。君、ちょっとここへ座ろうか」
浦島、商店も前に出されているベンチを指さした。
× × ×
ベンチに座っている浦島と省吾。浦島は手帳にペンを持っている
省吾「家に行ってもいいですけど猫以外だれもいませんよ。父親は年増女と不倫して出ていくし母は朝からパートの仕事で忙しいんです。母は学校いきたくないんなら、いかなくていいと言っているんです。姉はもう学校へ行ったし、ぼくはこれから猫の餌を買いにコンビニへ行くんです。どうせだったら、お巡りさん、僕と一緒にコンビニまで行きませんか」
その時、警察無線が入る。
浦島、胸の無線を取る
警察無線「交通事故が発生しました。近くにいる警邏中の警官も至急現場に向かってください」
浦島「君、後ろ乗って」
浦島警官、自転車の後部を示す。
省吾「ラッキー。コンビ二連れてってくれんの」
浦島警官「違う、交通事故だ」
猛スピードで回転する自転車のタイヤ。
〇 街の中
猛スピードで回転する軽自動車のタイヤ。
猛スピードで逃走する軽自動車。
その軽自動車を追うクロッチ。クロッチのアップ。
〇 軽自動車の中
バックミラーに移るクロッチ
爺「猫なんかに追いつかれてたまるか。同じ場所をぐるぐる回って疲れさせてやれ」
爺、急ハンドルを切る。
〇 事故現場
省吾の乗ったパトカーが付くと被害者を乗せたした救急車とそれ違った。
【登場人物】
省吾(14歳) 中学二年生 主人公
しまくん(5歳) 猫
櫻 (17歳) 省吾の姉
浦島(30歳) 警官
クロッチ(4歳) 黒猫
爺(88歳) 軽自動車の運転手
春野 静香(14歳) 省吾の同級生
優 (14歳) 省吾の同級生
交通部交通課の職員(50歳)
〇 省吾の家 台所 午前七時
食卓テーブルの椅子に座りゲームに熱中している省吾(14歳)
食卓テーブルの上、省吾の隣で猫のしまくんがニャーニャー言っている
しまくん「今日、櫻姉ちゃん、どこへも行かないほうがいいよ」
省吾、チラリと見るが、再びゲームに夢中になる
食卓テーブルの向かい、台所調理器具の前で姉の櫻が学生服の上にエプロンを羽織って目玉焼きを作っている。
しまくん、省吾にニャーニャーと叫んでいる。
しまくんの鳴き声が気になる様子の櫻。
櫻、食卓テーブルにご飯と目玉焼きを置いて
櫻「しまくんが省吾にさっきから何か言っているけど聞いてあげたら。あんた猫の言葉が分かるんでしょ」
省吾「判る、といよりもしまくんがぼくに日本語でしゃべりかけてくるんだ。」
櫻「あ、そう。で、なんていってるの」
省吾「しまくんが姉ちゃんに学校行くなって」
櫻「ははは。不登校のあんたじゃあるまいし、家の中に不登校が二人もいたら赤字路線まっしぐらよ」
櫻「(エプロン外し)先、いくね」
省吾「姉ちゃん、朝飯食べないでいくの、力尽きて死んじゃうよ」
櫻「バイト先で食べるからいいの。それよりもう半年になるけど、アンタ、まだ学校行く気ないの?」
省吾「(食べながら)ぼくの足が学校方面にいくのを拒否してんの。無理でやんす。」
しまくんがまた、ニャーニャーいう。
しま「櫻ねえちゃん、どこにも行っちゃだめ」
櫻「また、しまくん何か言ってるよ。鰹節がないって怒ってんのかな」
省吾「(しまくんの頭をなでなでしながら)鰹節が食べたいのか。」
しまくん「違う!櫻ねえちゃんに行かないでって言って」
しまくん、櫻の服を叩く。
櫻「こんどは?」
省吾「鰹節が食いたいから早く買ってこいって」
省吾、しまくんの頭をなでなでする。
櫻、自分の顔写真が貼ってある『フォトミラー』を開いて自分の顔を見る。
櫻「よし、メイクばっちり」
省吾「女子高生なのにお化粧なんかしていいの」
櫻「バイト先では必要なの。でも学校行く前にはメイク落とすから大丈夫よ」
櫻、玄関に向かう
しまくんのアップ。しまくん、少し心配顔。
〇 交通量の多い交差点 街の中
櫻、信号機のある横断歩道の前で待っている。
猫のクロッチが櫻のそばに寄ってくる。
クロッチ、櫻を見上げる。
櫻、気が付き、しゃがんでクロッチの頭を撫でる。
信号が青に変わる。櫻、見る。
櫻、横断歩道を急いで歩く。
シルバーマークの軽自動車、急スピードを出しながら横断歩道に突っ込んでくる。
櫻と衝突をする。
櫻、路上に倒れる。櫻の『フォトミラー』が鞄から外れて路面に転がる。
運転席から老人が顔を出す。
猫のクロッチが見ている。老人と目が合う、。
すぐ引っ込めて猛スピードで逃げる。
クロッチ、軽自動車を追いかける。
〇 省吾の家 省吾の部屋
省吾が机の上に上がっているしまくんの顔をじっと見ている。
省吾「しまくん、なんで日本語話せるの」
しまくん「猫はねぇ、この世に使命感を受けて猫の世界から降りてくるんだよ。」
省吾「使命感!」
しまくん「そうさ。君みたいな登校拒否児の意見を聞いたり介護老人施設に入り込んで塞ぎこんでいるお年寄りの気持ちを癒したり、自殺をしようとか生きることに希望を見い出せない人たちの前に降りてきて元気を出してもらうのが我々猫の使命なのさ。」
省吾「じゃどうやってするのさ。」
しまくん「君の場合、頭の中をコントロールして、学校へ行こうという気にさせるのさ。だから、いじめがあっていきたくないとか、いやな先生がいるとか、勉強が嫌いだからとか、理由は頭から消えちゃうのさ。いじめがあろうが勉強が嫌いだろうが、学校へ行きたい、という気にさせるのさ。勝手に足が学校へ向くように脳内改造をさせるのさ。」
省吾「フーン。実際にはどうやんの」
しまくん「こうやって(前足で省吾の頭を押さえ自分のおでこにくっつけ)ぐりぐり、しながら猫魂を注入するのさ」
省吾「じゃ、ぼくにやってみせてよ」
しまくん、やって見せる。
しまくん「どう、変わった?」
省吾「全然変わらんな。なぜだろ」
しまくん「言うの忘れとったが、完全なあほには効き目がないんです」
省吾「ぼくはあほ、か」
しまくん「あほが、証明されただけでもありがたいと思えや。それより、鰹節買ってきて」
省吾「はいはい」
省吾、リュックを背負って部屋を出る。
しまくんの顔。
しまくん「あ、鰹節どころじゃないんだ!」
しまくん、廊下の猫ドアからダッシュしてでていく。
〇 通学路
学校へ登校する中学生たち。
すれ違うように逆方向へリュックサックを背負って歩いている省吾。
〇 街 商店街
行きかう人ごみの中に省吾がスマホでゲームしながら歩いている。
警邏中の自転車に乗った警察官、浦島(30歳)とすれ違う。
浦島、自転車を降り省吾に追いつく。
浦島「きみ、きみ」
省吾「(立ち止まり)きみって、僕のことですが」
浦島「君は中学生だろ、学校は」
省吾「あ、そのことですか。僕は自慢じゃないですが登校拒否児、つまり不登校児童です。では急ぎますので構わないでください」
浦島「そういうわけにはいかないよ。君、ちょっとここへ座ろうか」
浦島、商店も前に出されているベンチを指さした。
× × ×
ベンチに座っている浦島と省吾。浦島は手帳にペンを持っている
省吾「家に行ってもいいですけど猫以外だれもいませんよ。父親は年増女と不倫して出ていくし母は朝からパートの仕事で忙しいんです。母は学校いきたくないんなら、いかなくていいと言っているんです。姉はもう学校へ行ったし、ぼくはこれから猫の餌を買いにコンビニへ行くんです。どうせだったら、お巡りさん、僕と一緒にコンビニまで行きませんか」
その時、警察無線が入る。
浦島、胸の無線を取る
警察無線「交通事故が発生しました。近くにいる警邏中の警官も至急現場に向かってください」
浦島「君、後ろ乗って」
浦島警官、自転車の後部を示す。
省吾「ラッキー。コンビ二連れてってくれんの」
浦島警官「違う、交通事故だ」
猛スピードで回転する自転車のタイヤ。
〇 街の中
猛スピードで回転する軽自動車のタイヤ。
猛スピードで逃走する軽自動車。
その軽自動車を追うクロッチ。クロッチのアップ。
〇 軽自動車の中
バックミラーに移るクロッチ
爺「猫なんかに追いつかれてたまるか。同じ場所をぐるぐる回って疲れさせてやれ」
爺、急ハンドルを切る。
〇 事故現場
省吾の乗ったパトカーが付くと被害者を乗せたした救急車とそれ違った。
作品名:いつか君が前を向く日まで 作家名:根岸 郁男