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二人だけの秘密 ~今月のイラスト~

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「うん……びっくりしたよ、でも素晴らしいライブ、魂を揺さぶられるような歌だったよ」
「やっぱり見間違いじゃなかったんだ……」
「もしかして、秘密にしておきたいの?」
「う~ん、どうしてもってわけじゃないけど……別に悪いことしてるわけじゃないし……でもなんだかちょっと気恥ずかしくて」
「そうだな……じゃぁ、二人だけの秘密ってことでどう?」
「ええ、それが一番かも」

 それをきっかけに詩乃との距離がぐっと縮まったのは間違いない、二人きりで話す機会も増えた。
 詩乃は一人っ子で、彼女が小学校高学年の頃から両親が不仲になり、中一の時に離婚してそれ以来母子家庭なんだそうだ。
 中一から中二と言えば精神的に一番不安定な時期、でもずっと『大人しい良い子』だった詩乃はグレることも出来ず、とは言え心の奥底には割り切れない思いも抱えていて、それを発散する術を必死に探していて、母親にきつく当たってもいたそうだ。
 そんな時に出会ったのがジャニス、彼女の歌を聴くと自然と涙が流れ、父と決別した母の気持ちもなんだかわかるような気がしたのだと……。
 離婚以来少しぎくしゃくしていた母娘関係もそれからは徐々に回復して行き、母にきつく当たるようなこともなくなったのだそうだ。
 そして ジャニスのCDに合わせて歌っているうちに自然とブルースフィーリングが身に着き、高校の時にはバンドで歌うようになった、だが、詩乃の年代ではブルースロックをやろうなどと言う仲間は現れず、大学時代にライブハウスで今のバンドの演奏を聴き、ヴォーカルをやらせてくれと申し入れた、バンドはその当時ギタリストがヴォーカルを取っていたのだが、正直あまり得意ではなく出来ればギターに専念したかったそうで、詩乃の歌を聴いたら一も二もなく加入してくれと……それ以来一緒にやっているのだそうだ。

「次のライブはいつ?」
「まだはっきり決まってないですけど、たぶん来月の頭くらいかな」
「また聴きに行っても良いかな?」
「もちろん、ぜひ」

 古風なくらいに清楚できめ細やかな心配りが出来る、優しい娘。
 それと裏腹に心の奥底に潜む感情を絞り出すように歌う、魂のヴォーカリスト。
 詩乃は二つの顔を持つが、どちらも彼女の本当の顔だ。
 俺はもうそんな彼女にぞっこんだ。
 彼女もまんざらでもないようなそぶりを見せてくれるから、結構脈があるんじゃないかと思う。
 何しろ『二人だけの秘密』を持つ間柄だからね。