A Funny Case
そこで、サラはこんなことを提案した。
「それなら、『Eeny,meeny,miny,moe(イーニーミーニー・マイニー・モー)』で決めましょう」
「うん、そうしよう」
彼女の言った「Eeny,meeny,miny,moe」とは、日本で言う「誰にしようかな神様の言うとおり」に近い、遊び歌とくじ引きのミックスである。ちなみに、選ばれても苦情は受け付けられないのは暗黙のルールである。
「イーニー、ミーニー、マイニー、モー、虎のつま先捕まえろ、もし吠えたら放しちゃえ、イーニー、ミーニー、マイニー、モー」
その結果、変なマドレーヌの処理係がヒューゴに当たった。フィル、ジミー、スティーブンは限りなく蔑みに近い憐れみを込めた視線を彼に向けた。
(何て屈辱的な…。あんな下品な形のを俺が食うのかよ…)
ヒューゴは内心そう思っていると、スティーブンが口を開いた。
「いや、でも、冷静に考えると、俺たちが食べようとしてるのは手作りマドレーヌですよ。一つだけ形があれでも、せっかく母さんが作ってくれたんだから、おいしく食べなきゃですよ」
ほかのメンバーは、ふむふむとうなずいた。
「そうだよね。僕たちの目の前にあるのは、味も香りもあるマドレーヌであって、あれじゃないんだよね」
「スティーブン、おまえの一言で流れが変わった。ありがとな」
「いやいや…」
「よし、これから『もぐもぐタイム』だ。汚い話は言いっこなしな」
LOVE BRAVEのやりとりを聞いて、サラはうれしそうに二度うなずいた。
こうして、ノースベイ出身の世界的ロックバンドの明るい「もぐもぐタイム」が始まったのでした。
(Fin)
作品名:A Funny Case 作家名:藍城 舞美