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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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A Funny Case

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イェーツ邸でLOVE BRAVEの4人が来年リリース予定のアルバムのレコーディング前の選曲ミーティングをしていると、インターホンが鳴った。家の主であるフィルがドアを開けると、プラスチックのトレーを持ったサラが立っていた。トレーの上には、ラップに覆われた何個かのマドレーヌが乗っている。
「ハーイ、フィル」
「おお、サラ」
「差し入れのスイーツを持ってきたわ」
「いつも僕らのためにありがとう、サラ」
 サラが上がってきて、ヒューゴ、ジミー、スティーブンが居るテーブルまでトレーを運んできた。
「これらは差し入れよ。みんなで召し上がれ」
 サラがトレーを覆っていたラップを外すと、バターとシナモンのほのかな香りが躍り出た。LOVE BRAVEは、
「おおっ!」
 と子どものように目を輝かせた。サラが差し入れとして時折持ってくる手作りスイーツは、メンバーはもちろんスタッフの間でさえ好評なのだ。

 しかしその数秒後、フィルが顔を背けて失笑した。
「どうした、フィル?」
 ジミーが尋ねると、フィルは一つのマドレーヌを指差した。
「これ…形がヤバい…」
 彼の仲間たちが見ると、そのマドレーヌはカメラに映してはいけない「18禁」という感じの形をしていた。
「色と言い、形と言い、それにしか見えない…」
 ジミーが必死で笑いをこらえながらつぶやいた。ヒューゴはなぜかスティーブンのほうを見て少し意地悪そうな笑みを浮かべ、目を下に動かした。
(何で俺のこと見て笑うの…?)
 小さな疑問を残したまま、年若いギタリストは、その母に尋ねた。
「母さん、これ、わざとこの形にしたの…?」
「この形って?」
 サラも問題のマドレーヌを目にすると、それは結婚前に一度見て、息子が生まれてから約5年間幾度となく見てきた「何か」に似ていた。それで彼女は苦笑いしながら
「やだ、何これ」
 と言った。もしこれがピッパなら、「キモイ」などと発言して、男性陣の反感を買ったことだろう。しかしサラは、
「形を作るときに失敗しちゃったのね。ごめんなさい、変なもの作っちゃって」
 と素直におわびした。むろん、フィルたちは寛大な態度を取った。
「いや、大丈夫だよ。でも次の問題は、誰がこれを食べるかだ」
 フィルの言葉に、メンバーは互いに顔を見合わせ、フィルはヒューゴを、ヒューゴはスティーブンを、スティーブンはジミーを、ジミーはフィルを指差して、同時に
「おまえが食え!」
 と言った。その後数秒間、その場は妙な静寂に包まれ、LOVE BRAVEは無言で目だけを動かしてお互いを見た。これにはサラも呆れてため息をついた。
(お金や人間関係のゴタゴタでもめたことはないのに、たかが形の悪いマドレーヌ1個でもめるなんて…)
作品名:A Funny Case 作家名:藍城 舞美