奇っ怪山の未確認生物たち
「女友達から、未確認生物の新情報ゲットしたぞ! だから直樹、発見の旅に付き合ってくれないか、明日19時、その打ち合わせで、いつもの居酒屋で待ってるから、ヨロチクね」
帰宅途中、浩二からこんなラインが入った。
本当に驚きましたよ。
何がって?
それは未確認生物の新情報ではなく、浩二が言う『女友達』です。
だいたいヤツは定職に就かず、未確認生物をずっと追っ掛けてきてます。
お前は馬鹿か、働け! といつも言ってやってるのですが……。
だけど学生時代から付き合ってきた友ですので、ここはちょっと持ち上げて浩二を評すると、刀一本の野武士かな。
反対に貶(けな)せば、腹を空かせた痩せ狐、うーん、こっちの方が的を得てるかもね。
いずれにしてもそんな友人が――、女友達だって。
私は思わず叫んでしまいました。
「信じられな~い!」
一方私はまじめが得意の貧乏サラリーマン。
だけれども、結婚を夢見てコツコツと貯金してるぞ。
それなのに俺には女友達なんていな~い!
一体世の中、どうなってんだ!
この世に縁結びの神っているのか! と愚痴ってみても、余計に面白くなくなるだけ。
されどもここでちょっと思考を巡らせば、浩二と私は友達。
ということは、浩二の女友達は、友達の友達ってことじゃないですか。
割に近しいじゃんと思い至り、「新情報を肴に一杯飲むか」とラインで返しました。
翌日時間通りに居酒屋に入店。
するとですよ、すでに個室で、浩二と女友達が生中を仲良く呷ってました。
ムカッときましたが、彼女がどんな女性か興味もあり、「ヨッ、久しぶり」と二人の前に座りました。そこからは私もビールを注文し、胃に給油しながら一通りの挨拶をしました。
これが終わり、浩二はデレデレ眼差しを彼女に向け、馴れ馴れしく催促するじゃありませんか。
「未確認生物の新情報交換会、というか、そのコンパで気が合っちゃったんだよな。さあ、直樹に新情報を話してやってくれないか、娑羅姫(さらひめ)」と。
作品名:奇っ怪山の未確認生物たち 作家名:鮎風 遊