奇っ怪山の未確認生物たち
こんなやり取りの後は、当然、場はシーン。
私はちょっと我を押し出し過ぎたかなと、ちょっと反省したまま棒立ち状態。
また浩二は、私から今までの未確認生物の旅の不満を聞いて、多分ムカッときたようで、口を真一文字に結んだまま遠望にある頂上を睨み付けてます。
一方娑羅姫は平家の末裔らしく、岸辺で麗(うるわ)しくたたずんでおられました。
このようにちょっとチグハグ状態で、だんまりがしばらく続きました。
そしてそれを破ったのが姫こと魔界平娑羅さん、ぼそりぼそりと語り始められました。
「今回縁あってお二人にツチノコ、またそれ以外に奇っ怪山の未確認生物を紹介させてもらいました。それらの中で、お二人にとって最も驚きの出会いだったのは……、ひょっとして平家の落人だったのかも知れませんね」
私は思わず「当ったりー! しかもお姫様にね。お前もそう思うだろ?」と浩二に振りますと、「ああ、平家の落人の娑羅姫は『孝』ちゃんよりも珍しい生き物だったかもな」としみじみ呟きました。
こんな結論に、姫は「あ~あ、捕まっちゃったわ。なぜなら、浩二さんと直樹さんのコンビ、いとおかし、だったからよ。だから直樹さんの提案通り、兄殿たちのこれからの未確認生物発見の旅、私も参加させてもらって――、いい?」と、まずは会長の浩二を見つめ、その後私をじっと……。
これで私の心臓はパクパク。
それでも出来るだけ大きな声で「もちろん」と答えようとした時に、浩二は奇っ怪山にこだまするぐらいの大声で吠えたのです。
「ワーイ、オーイ、ヤッター」と。
私は訳がわからず、「何だ、それ? 気は確かか?」と問うと、浩二はさらに大きな声で。
「ワーイ、オーイ、新チームのスタートだよ、ヤッター」
この時私は思い出しました、そういえば『孝』の転がり開始の合図は人面山イルカの「ワーイ、オーイ、ヤッター」の遠吠えだったなあと。
あの時は恐怖でオシッコちびりそうになりましたが、今回はブッと吹き出しました。
そして横を見ると、浩二の女友達の魔界平娑羅嬢も艶めかしくも「ワーイ、オーイ、仲間入りだよ、ヤッター」と叫んでおられるじゃないですか。
こうなると仲間外れにされると困りますので、ちょっと長文ではありましたが、私も思い切り声を張り上げさせてもらいました。
「ワーイ、オーイ、浩二のただの知り合いの女性とのマリアージュ、スタートじゃ、ヤッター!!」
作品名:奇っ怪山の未確認生物たち 作家名:鮎風 遊